KEI ISHITOYA
新書編集部

2016年入社。新人で新書編集部に配属されて以来、ずっと新書一筋です。大学時代は興味の赴くままに専門以外のいろいろな授業に出ながら、一方でマンガへの愛も捨て切れずにコミックスを読み漁る日々を送っていました。志望していた出版社に入れたと思ったら、配属先は予想外の「新書」という結果に。しかし、心のどこかでもっと学び続けたいと思っていた学術も、大好きなマンガも、さらには実用書から硬派なノンフィクションまで、幅広いジャンルをなんでも扱うことができる自由な編集部なので、刺激的で楽しい毎日を過ごしています。

#01
私の仕事紹介

大学の入門書コーナーなどでも多く販売されている、「新書」という種類の本をつくるのがおもな業務です。「集英社新書」では一年間で合計50冊前後を刊行しており、編集部内で分担しながら、それぞれの担当者が興味関心に沿って企画を進めています。基本的には、企画を立てて会議に諮り、無事に通過したら形にできるよう力を尽くす……という流れです。「こんな本があったらいいのに」「いま、こういうことが知りたいな」という願望や好奇心を出発点にできる仕事なので、大変なことも多いですが、やりがいも非常に大きいです。
また、それ以外にも2023年度で第21回を数える「開高健ノンフィクション賞」の運営補助、年に4回刊行される季刊誌「kotoba」の連載企画、および編集部で運営するウェブサイト「集英社新書プラス」の編集など、仕事内容はきわめて多岐にわたります。

#02
「夢中」になった仕事

最も思い入れのある担当作は、アイヌ語研究者の中川裕先生による『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』という新書です。入社したときから『ゴールデンカムイ』という作品が好きで、作中で解説されているアイヌの文化や風習についてもっと深く知りたいという思いから、配属が決まってすぐに企画書を提出し、関連資料を読み込みながら個人的に勉強を続けました。学べば学ぶほど、アイヌ文化の奥深さに惹かれるとともに、「この面白さを少しでも多くの方に伝えたい!」そして「『ゴールデンカムイ』という作品の凄さを表現したい!」という気持ちが高まりました。
その後、作品のアイヌ語監修を務める中川先生と打合せを重ね、「せっかくならば『ゴールデンカムイ』を全面的に引用しながら、いままでにない入門書をつくろう」という話になりました。編集部ではあまり前例のない企画だったため、様々な苦労もありましたが、ヤングジャンプ編集部の協力、そして原作者の野田サトル先生のご厚意もあり、なんと表紙イラスト・描き下ろしマンガまで頂戴し、最高の形に仕上げることができたと思います。おかげさまで同書は多くの方からご好評をいただき、時間をかけて版を重ね、10万部の大台を突破しました。自分が心の底から「読みたい」と思っていた本をつくることができ、本当に幸せな経験でした。 現在は『ゴールデンカムイ』の完結を受けて第2弾(続編)の刊行を目指していますが、当初の予定よりも作業が遅れ気味に……(笑)。なんとか形にできるよう、全力を尽くしています!

SCHEDULE ある日のスケジュール SCHEDULE ある日のスケジュール

10:00

出社後すぐにメールチェック。11時からの企画会議に提出すべく、大急ぎで新書の企画書を仕上げる

11:00

定例の編集会議。情報共有や原稿の進捗報告をした後、いよいよ企画会議に進みます。先ほど完成したばかりの企画書をもとに発表。鋭いツッコミが入ることも多く、いつも緊張します。ここを通過すると正式に着手できることになります

編集会議の様子。コロナ禍以降はZoomによるリモート参加も併用しています。中央左で企画案を発表しているのが私です。

13:30

会議後、会社近くの中華料理店「源来酒家」で昼食。予約していたマンガが届いたので、読みながら息抜き

15:00

会社に戻りメールを確認後、著者と打合せ。まだ刊行のタイミングが決まっていない原稿に関して、今後のブラッシュアップの仕方をご相談

著者との打合せの様子。頂戴していた原稿や資料をもとに、今後の進め方や図表のつくり方について意見をすり合わせます。

16:30

Webサイト「集英社新書プラス」で連載中の原稿が数回分まとめて届いたので、読み込んだうえで著者に感想・意見をお伝えします。また、近日公開のためにあらかじめ準備作業を進めておきます

19:00

簡単な夕食を取ったのち、メール確認・電話。その後、担当する著者の方が仕事で利用するホテルを予約。これも編集者の大切な仕事(!)です

19:30

近いうちに本になる原稿(ゲラ)の読み込み。夜の時間帯は静かになり集中しやすい環境なので、原稿読みに充てることが多いです

22:00

メールチェック後、帰宅

25:00

競馬ノンフィクションの傑作『銀の夢―オグリキャップに賭けた人々』(講談社文庫)を読み返してから就寝

#03
就活生へのメッセージ

改めて振り返ると、「学生時代にもっとやっておけばよかったなあ」と思うことがいくらでもあります。もっとたくさんの本やマンガを濫読しておけば、いろいろな映画を観ておけば、語学をしっかり勉強しておけば、そして世界のあちこちを旅していれば……(いまではコロナ禍もあり、旅行自体が難しくなってしまいました)。
社会人になると、中期~長期的スパンでゆったりと時間を取って、何かに打ち込んだり習得しようとしたりすることが本当に難しくなってしまいます。学生時代に与えられた最大の特権のひとつは「時間」だと思います。この状況でなかなか思うようにいかないことも多いかと思いますが、ぜひとも様々なことを体験しながら、学生生活を最後までめいっぱい楽しんでください!

※2022年9月に取材した内容です。