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#3

1971年の創刊以来、女の子の味方として寄り添い続けるファッション誌
「non-no」。
近年では『大学生の支持率No.1メディア』をキャッチフレーズに、
プリント版とWeb、双方向のメディアとして地位を確立しつつあります。
18歳~22歳の大学生たちから信頼されるコンテンツづくりについて、
小泉編集長(ブランド統括兼non-no Web担当)、中込編集長(プリント版担当)
の2名に話を聞きました。

「non-no」ブランド統括兼Web編集長

中込 直子 (なかごめ・なおこ) NAOKO NAKAGOME

2002年入社、「non-no」、「BAILA」を経て、2021年から「non-no web」編集長。2023年から同誌のブランド統括兼Web編集長。

「non-no」編集長

小泉 光代 (こいずみ・みつよ) MITSUYO KOIZUMI

2002年入社、「LEE」、「SPUR」を経て、
2015年に「non-no」へ。2023年から「non-no」編集長。

CHAPTER 01

“好き”に出会うきっかけのメディアとして
“好き”に出会うきっかけの メディアとして

現在、プリント版とWeb両方で現役大学生から高い支持を得ている「non-no」。
2024年予定のサイトのリニューアルに合わせて、新たな軸として掲げようとしているのが「はじめても、はじまりも。non-no」というコンセプトです。まずは、この言葉が生まれたきっかけから、教えてください。

小泉:

「non-no web」は、2024年春にリニューアルを予定しています。「non-no」読者、ユーザーの皆さんに新しい「好き」を見つけていただけるサイトにすべく準備を進めているのですが、その打合せ中に、デザイナーさんから「『non-no』とは、どんな存在で、これから何を目指していくのですか?」と尋ねられたんです。とても基本的な問いなのですが、その場で端的に答えることができませんでした。そこで「non-no」がずっと向き合ってきたことを整理して表にまとめてみました。出てきたキーワードは「親切・丁寧」「優しさ」「明るさ」「誠実さ」「半歩先の提案」。1971年の創刊以来、「non-no」は時代に合わせた提案を続けてきましたが、変わらないのは、これからたくさんの「はじめて」を経験する世代がまず手に取る雑誌であり、常に読者に寄り添ってきたメディアだということです。そしてこれからも、ファッション、美容、ライフスタイルなど、あらゆるジャンルではじめての「好き」に出会って、何かを始めるきっかけになる存在であり続けたいと考えました。この先も愛され続けるメディアであるために、「はじめても、はじまりも。non-no」を編集部全員が大事にしながら、コンテンツをつくっていけたらと思います。

CHAPTER 02

読者世代とのコミュニケーションを大切に
読者世代との コミュニケーションを大切に

現在の「non-no」は、Web、プリント版共に、現役大学生の生活によりフィットする形で情報発信されています。日々、興味や関心が移ろうこの世代の感覚を、どうやって把握していますか?

中込:

専属の読者組織や、編集会議前にリモートで行なっている読者会があり、ユーザーの声を徹底的に集めるようにしています。「non-no」には空想上の読者はいないんですよ。すべて等身大の大学生たちの声を取り入れてつくっているメディアなんです。

専属の読者組織には、
どんなものがあるのですか?

小泉:

「カワイイ選抜」と「大学生エディターズ」があります。「カワイイ選抜」は、わかりやすく言うと”読者モデル“ですね。たとえば、人気の「骨格別ファッション」の特集をプリント版に掲載するときに、モデルの着用カットだけではなく読者代表的な存在の「カワイイ選抜」に試着してもらい、撮影することで、より説得力のある企画になります。

中込:

インフルエンサーだったり、誌面に顔を出して登場したい、という方々が「カワイイ選抜」のメンバーですね。

小泉:

そうですね。一方で「大学生エディターズ」は、「non-no」を通じて同世代に情報を発信したい等身大の大学生。応募時に800字の原稿を書いていただくのですが、約4倍の倍率から選ばれた1期生・2期生合わせて120名が活動しています。編集部からも毎月お題を出しますが、月に4回更新をお願いしている記事の内容はお題以外お任せ。なかには1記事で10万PV以上の反響を得たり、月に13記事も書いてくださる方もいて、ぜひ製品やイベントについて記事で紹介して欲しい、と企業からも多くのお問い合わせをいただいています。エディターズの条件は現役の大学生であることなので、卒業と同時に活動は終了し、毎年新しいメンバーが入ってくるシステムです。「大学生エディターズ」が発足したのは、まさにコロナ禍が始まった年でした。ちょうど、就活生たちがエントリーシートに書けるガクチカ(学生時代に力を入れたこと)に頭を悩ませていた時期と重なっていたのですが、「大学生エディターズの活動をガクチカとして書けた」、「面接先で盛り上がれた」など、メンバーからうれしい声ももらっています。今後も、3期、4期と続けて、活動の幅を広げていきたいです。

もうひとつの柱となる、編集会議前の読者会は、どういう人が参加されていますか?

小泉:

「大学生エディターズ」から、私たちがお話を聞きたいと思った方に声をかけています。毎月実施しており、彼女たちの気になることや流行っていることを徹底的に教えてもらいます。リモートで実施するので地方のメンバーも参加できますし、購入品をモニター越しに見せてもらうこともあります。

中込:

読者会に参加してくれる方々は、私たちが気軽に話を聞けて、なおかつ彼女たち自身も「non-no」が好きで、雑誌の役に立ちたい、と思ってくれているんですよね。メディアへの関心が高い大学生の女の子たちの、流行りや感覚をリサーチできている点では、絶対的な自信があります。ただし私たちは「読者じゃない大学生」のふだんの暮らしかたや興味、関心事も知りたいと思っていて。

小泉:

実際には「雑誌は読まない」という大学生もたくさんいますよね。そこで中込さんは、編集部全体で行なっている読者会とは別に、大学生を集めて取材を重ねているんです。

中込:

「大学生エディターズ」とはまた違う、読者以外の大学生からの意見も知りたいので、独自にヒアリングを重ねています。これは、私の大学時代のゼミの後輩から始まり、紹介に紹介を重ねて、メンバーをつないでいきました。声をかけるのは不定期で、都合が合うときに参加してもらって、読者会と同じように最近好きなことや日常生活について感じたことなどを話してもらっています。これを1回2人1組で、月に2回行なうんです。「大学生エディターズ」と、私が声をかけた大学生たちから同じキーワードが出てくると「これがいまのリアルか!」と感じますね。

小泉:

こうして両方の視点を知っていることは、コンテンツをつくる際にとても役に立ちますし、「non-no」が「大学生の支持率No.1メディア」であり続けるために欠かせないことだと思っています。

CHAPTER 03

大学生のライフイベントに
寄り添う「non-no」

読者層を大学生にしぼった理由は何でしたか?

小泉:

「non-no」は長らく20歳前後の読者に向けて雑誌をつくってきましたが、よりターゲットを明確にしぼりこんだほうが企画も発信もしやすいのではと考え、3年前から“大学生” という打ち出しを始めました。

中込:

じつは大学時代の4年間って、人生の中でもはじめてのイベントがとても多いんですよね。ひとり暮らし、入学、メイク、ファッション、インテリア、お酒も飲めるようになるし、車の免許も取り始める……。いろんなことが自分でできるようになり、その先に卒業、就職があるのがこの4年間なんです。

小泉:

情報があふれているなかで、ぼんやりとコンテンツをつくっても狙っている層には届きづらい気がしていて。ライフイベントが多い大学生に焦点を合わせたほうが、企画を立てやすいところはあります。

その言葉通り、「non-no」の大学生向けの記事の中で手厚いと感じるのが就活特集です。

小泉:

就活特集は、とくにプリント版で力を入れているテーマです。

中込:

そうですね。ライフイベントが多い大学生のなかでも、就職活動は特別な通過地点といえるもの。専門的な知識や情報は、大学の就職課やリクルートサイトを活用するのがいいと思うのですが、「non-no」は、もっと情緒的にフィットしたり、応援していけたらと考えています。たとえばコロナ禍が始まったことで、就職活動の状況は大きく変わりました。それまでは大学生の売り手市場が続いていましたが、感染拡大の影響を受けて、業界によっては採用をしぼるところも出てきましたし。こうした時代の流れを敏感にすくいあげて、現実の大学生たちをフォローできないか、というところから企画が立ちあがったりもしました。

好評だった就活特集はありますか?

中込:

大学生取材を通してわかった、就活期間の細かな心の動きをくみとった特集は、「non-no」ならではだと思います。単純な成功談ではなく、就活で迷ったときにこんな選択肢もあるという、気づきのある内容にしたいと思いました。そこで、就活をはじめたときの志望業界と、実際に入社した業界が違った人の就活ルポや、「好き」を仕事にした人、または「好き」を仕事にしなかった人のその先……などを追いかける記事をつくりました。ほかにも「誌上OG訪問」という連載があります。

小泉:

「誌上OG訪問」は、プリント版とWebの連動企画でもあります。とても情報が充実しているのに、プリント版を手に取った人しか触れられないのはもったいないなと。プリント版で出し切れなかった、より詳しい情報をWebに出したり、最近ではTikTokなどのSNSでも過去の連載のまとめを公開しています。そしたらこれがとても反響があって。

中込:

顔出しなし、匿名で話してもらう連載なので、勤務体系や給料などについても赤裸々に聞いています。同じ業界で働いている方がSNS上で「このデータ、マジでリアルだわ」とコメントしているのも見かけましたよ(笑)。

紙の雑誌からスタートした「non-no」ですが、就活テーマひとつとっても、デジタルとの共存を考えながらつくっているのですね。

小泉:

「non-no」 の価値を広く伝えるためにデジタルの新しい施策を考え続けることが必要だと思っています。SNSフォロワーの中には「non-no」のプリント版を買ったことのない人もいると思います。だけど私たちからの発信をきっかけに、読んでみようと思う方もいると思うんです。少子化もあり、今後プリント版が100万部売れることはないかもしれませんが、つくったコンテンツを100万人以上に届けることはできるはず。これからも様々な方向からアプローチできたらと思っています。

CHAPTER 04

編集長も若手も。
みんなで「non-no」を盛り上げる
編集長も若手も。 みんなで「non-no」を
盛り上げる

2名の編集長それぞれの役割についても聞かせてください。中込さんがプリント版、小泉さんがデジタルの編集長となっていますが、実際はどのように分担していますか?

中込:

厳密な分担はしていなくて。「7:3でプリント版のことを考えている人」と、「7:3でデジタル展開を考えている人」ぐらいの感覚です。たとえば、就活コンテンツをTikTokでも公開したいと提案したのは私でしたし。逆に小泉さんがプリント版向けの提案をすることもあります。お互いがお互いのことを考えながら、よりクリエイティビティの高いコンテンツをつくる、という感じです。

そのほかにも、おふたりが編集長になってから意識されていることはありますか?

小泉:

「会議の風通しをよくする」、「話しかけられやすい編集長でいる」ことでしょうか。
私が新卒で「non-no」に入った頃は、編集会議といえば自分の考えた企画を緊張しながら読みあげ、編集長は時々目が合う、雲の上のような存在でした。それはそれで気持ちが引き締まって悪くはなかったと思うのですが、これからは、年齢や役職にとらわれず、みんなで媒体を盛り上げる雰囲気をつくりたいなと。

中込:

会議も、プランは事前に共有して、その中から気になったものを副編集長がピックアップ。それをベースにみんなでディベートする形にしています。読者に近い世代の意見が聞きたいので、入社間もない若手の編集部員に質問が集中することもありますよ。小泉さんと私は同期なのですが、いつも言い合っているのが「私たちはおばさんだからね」と(笑)。この言いかたは自虐的であまりよくないのは承知なのですが、「自分たちの感覚は古いかもしれない」というのを端的に口にすることで自分を戒めている感じです。私たちの経験が正解とは限らないし、後輩に考えを押しつけないように気をつけています。むしろ、若手の意見のほうがリアルなのではと考えてそちらを採用することも。といっても、読者会を密に行なって編集部全体で読者の嗜好の傾向などを共有できていることもあり、世代間で大きく意見が割れることもあまりないですが。

今後、「non-no」にはどんなメンバーに入ってほしいですか?

小泉:

ジャンルを問わず、「好きなこと」があるといいですね。人に限らず、モノでもなんでもいいんです。自分の中に確固たる「好き」があれば、他の人の「好き」も理解できますし。

中込:

それもオタクの「好き」がいいですね。いまの時代、“全員に刺さる”というのはあり得ないと思っていて。自分だけが特別に深掘りできる「好き」を持ちつつ、世の中の動きにも無関心ではないミーハーな心もある人が、編集者に向いている時代だと思います。あとは「とりあえずやってみる!」という気持ちがある人。

小泉:

よく「編集者になるための資格ってありますか?」と質問を受けますが、資格はとくに必要ないし、実務的なことは入ってからどんどん覚えられるので、気にしなくて大丈夫。それよりも「こんな企画が実現したら楽しそう!」など、常に新しいことに挑戦する意欲がある人と一緒に働きたいなと思います。