2022.09.15

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創刊70周年。日本の芸能界と共に駆け抜けてきた「Myojo」の歴史

いつの時代も、「Myojo」には憧れが詰まっていた

アイドル雑誌「Myojo」の歴史の始まりは、戦後わずか7年後の1952年。「夢と希望の娯楽雑誌」というキャッチコピーをかかげ、漢字表記の「明星」として創刊しました。当時のターゲットは工場などに集団就職した若い女性たち。創刊号の表紙が津島恵子(『ひめゆりの塔』や『七人の侍』などに出演)だったことからもわかるように、映画の世界で活躍する俳優のグラビアを多く掲載し、日本のビジュアル雑誌の走りとして注目を集めました。娯楽が少なかった当時、女性たちはキラキラとした映画スターを見て、「あんな暮らしがしてみたい」と思いを馳せていたのです。

©明星1952年創刊号/集英社

©明星1952年創刊号/集英社

70年の歩みを振り返ることは、日本の芸能史を振り返ることと、ほぼイコール。テレビが普及し始めた1960年代後半には、ザ・スパイダースやザ・タイガースなどのグループサウンズが台頭し、1970年代には郷ひろみ・西城秀樹・野口五郎の“新御三家”と呼ばれたトップ男性アイドル歌手がデビュー。オーディション番組『スター誕生!』からデビューした森昌子、桜田淳子、山口百恵の“花の中三トリオ”や、ピンク・レディーなど女性アイドルも人気を博し、「明星」の誌面を華やかに彩りました。

1979年に放送が開始されたドラマ『3年B組金八先生』で注目されたのが、田原俊彦、野村義男、近藤真彦の3人。たのきんトリオと呼ばれ、相次いで歌手デビュー。1980年デビューの松田聖子と共に日本レコード大賞などの賞レースで活躍し、時代の象徴になりました。1982年には中森明菜、小泉今日子、早見優などがデビューし、アイドル黄金時代へ突入。1987年に光GENJIがデビューして爆発的なブームを巻き起こすと、翌88年「明星」も187万部という最大発行部数を記録しました。各芸能事務所が新しいスターを発掘し、年末の音楽賞レースに向けて盛り上げていくという、当時の日本の芸能界の流れの中に、「明星」も雑誌として重要な役割を担っていたのです。

歌からバラエティ、「明星」から「Myojo」へ

ところが、流れが大きく変わったのが90年代。音楽賞の人気に翳りが出始め、音楽番組も相次いで終了。歌を披露する場がなくなり、歌手のスターが生まれづらい時代になったのです。「明星」も、アイドル不遇時代を打破しようと1992年の創刊40周年にロゴをローマ字表記の「Myojo」に変更し、内容を刷新。その後、それまでは男女混合だった表紙を、男性アイドルのみという方向に舵を切りました。

その頃に彗星の如く現れたのが、1991年にデビューしたSMAP。バラエティ番組に出演し、お笑いもできるアイドルとして徐々に人気を獲得。1993年に木村拓哉がドラマ『あすなろ白書』でブレイクし、1994年にシングル『がんばりましょう』がスーパーヒットしたことで、確固たる地位を確立しました。さらに、当時デビュー前だったKinKi Kidsや滝沢秀明らジャニーズJr.の爆発的な人気により、低迷していた「Myojo」の部数も100万部台に復活。その後は、TOKIO、V6、嵐などがデビューした90年代後半から、2020年代にデビューしたSixTONES、Snow Man、なにわ男子まで、アイドルは高い人気を維持し続けています。

親和性が高いアイドル文化と雑誌文化

歌だけでなく、映画やドラマ、バラエティ番組などに活躍の場を広げ、アイドルの寿命が長くなったことで、「Myojo」の読者層にも変化が訪れました。90年代までは、小学校5年生頃から読み始め、高校1年生頃で卒業する読者が多かったのですが、今ではメインは中高生ではあるものの、小さなお子さんからシニア世代まで、ときには3世代で楽しんでいるケースもあり、幅広い年代に親しまれています。

アイドル誌である「Myojo」の強みは、デビュー前からしっかりと取材を重ね、信頼関係を築いていること。かつてはアイドルとその家族を一緒にグラビア撮影したり、実家にお邪魔した企画もありました。現在の人気企画は、年1回行われるファン投票「Jr.大賞」と、2011年5月号からシリーズで掲載している「10000字ロングインタビュー『僕がJr.だったころ』」。特に「Jr.大賞」は1995年にスタートして以来、根強い人気を誇っています。推しのアイドルに「恋人にしたいJr.」部門で1位をとらせたいという思いで、友人や仲間に投票を熱心に呼びかけるファンも多く、推し活効果が感じられる企画となっているのです。

©Myojo2022年10月号/集英社

70周年記念号は往年の漢字ロゴを使って歴史の長さを感じさせた
©Myojo2022年10月号/集英社

さらに、応援するアイドルが表紙を飾った号は複数買って並べて飾るなど、単純に情報を得る手段としてだけでなく、コレクションする対象のひとつに。出版不況が叫ばれる昨今ですが、アイドル文化と雑誌文化の親和性はとても高いのです。現在、誌面を飾っているアイドルたちは、華やかなコンサートで歌と踊りを披露し、ドラマや映画、舞台で堂々と主役を張り、バラエティ番組で素のキャラクターを惜しみなくさらけ出す、マルチな才能の持ち主たち。時代が彼らを求め続ける限り、これからも「Myojo」は、アイドルにリスペクトを持ち、愛情をこめて、魅力を発信し続けていきます。

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