2022.01.17

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漫画が夢の架け橋に! バスケットボール選手のアメリカ留学をサポートする「スラムダンク奨学金」


これまで13人の選手をアメリカに派遣

「週刊少年ジャンプ」で1990年から連載された『SLAM DUNK』は、バスケットボールに打ち込こむ若者はもちろん、スポーツ経験のない人たちの胸をも熱くさせてきた傑作漫画です。1996年に連載は終了したものの、2004年には累計発行部数1億部を突破。著者である井上雄彦氏が、全国6紙に感謝広告を出したことも話題になりました。

2006年に設立した「スラムダンク奨学金」は、そんな井上氏の「作品を愛してくれた読者とバスケットボールに恩返しをしたい」という志から生まれたもの。高校を卒業後、アメリカの大学あるいはプロを目指し、アメリカで競技を続ける意志と能力を持つ若い選手の支援をし、これまでに13人の若者をアメリカのプレップスクールに派遣してきました。

書類とプレー動画審査を経て、アメリカでの2日間のトライアウトで合否が決定しますが、奨学生に選ばれるのは決して強豪校で活躍していたスター選手ばかりではありません。派遣先であるセントトーマスモアスクールのジェリィ・クィンコーチの目にかなうのは、意外にもインターハイやウィンターカップに出場したことがなかった選手の場合も。

身長や手の長さ、言語やプレースタイルの違いなど、あらゆる壁に直面してもへこたれないメンタルの強さを持ち、明るくコミュニケーション能力が高い選手たちが、異国で果敢に挑戦を続けてきました。

Ⓒ井上雄彦 I.T.Planning,Inc.

奨学金を足がかりに夢へと前進する選手たち

奨学生の多くがBリーグで活躍しており、2008年に派遣された第1期生の並里成選手は、現在Bリーグ1部の琉球ゴールデンキングスに所属。2018-2019シーズン日本人アシスト王に輝くなど、第一線で活躍中です。

第11期生の小林良選手は、「スラムダンク奨学金」の奨学生で初めてNCAAディビジョンⅡのブリッジポート大学から全額奨学金のオファーを受けた逸材。現在は大学でビジネスを学びながらバスケットボールでもほぼ全試合に出場しています。

13期生として留学中の須藤タイレル拓選手は、昨年12月に行われた全米1位のプレップスクールとの試合で36得点を獲得し、チームの勝利に貢献。NCAAディビジョンⅠのノーザンイリノイ大学など多くの大学から奨学金のオファーを受けるなど、今後の活躍が大いに期待されています。

「スラムダンク奨学金」を足がかりとして、選手たちは確実に、それぞれの夢へと前進し続けているのです。

「NBAがゴールではない」井上雄彦氏の思い

「プレイヤーとしてだけでなく、1人の人間としても成長してほしい」と願い、選手たちの活躍を常に見守っているのが井上雄彦氏。コロナ禍以前はアメリカ派遣が決まった奨学生とそのご家族を招いて壮行会を開き、毎年現地も視察していました。また、日本に帰国しているOBを集めて年に1度食事会を開くなど、奨学生たちには我が子のように接しています。

井上氏が明言しているのは、「NBAがゴールではない」ということ。アメリカのバスケットボールを味わった選手たちが、本場での体験や出会いで得たものを、日本で伝えていくことが大切だと考えているからです。

色褪せない『SLAM DUNK』の作品力

Ⓒ井上雄彦 I.T.Planning,Inc.

設立から16年。これだけ長く「スラムダンク奨学金」を続けてこられたのは、『SLAM DUNK』の作品力があったから。奨学金の原資は井上氏の印税の一部や集英社の拠出金がベースになっていますが、連載終了から26年経った今もコミックスの重版がかかり続けている漫画はそうそうありません。

この熱意を引き継ぎ、事務方として尽力している集英社のスタッフの中には、井上氏にかつてファンレターを出した経験のある者や、「スラムダンク奨学金」に関わったことで初めてバスケットボールに魅了された者も。漫画をきっかけとした文化事業に携われることは、出版社の社員としても誇りとなっています。

『SLAM DUNK』を知らないバスケットボールファンはいないと言っても過言ではありません。『SLAM DUNK』が愛され続ける限り、そして夢を追いかける若者たちがいる限り、「スラムダンク奨学金」はこれからも続いていきます。

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