2025.10.15

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代表取締役社長・林秀明インタビュー

「楽しみを届けられる仕事がしたい」と、集英社へ入社

2025年8月、林秀明が集英社の代表取締役社長に就任しました。今回は、新社長の経歴や素顔をご紹介します。

1961年生まれ、東京都出身。銀行員の父の仕事の都合で、小学2年から韓国、中学2年からシンガポールにてそれぞれ約1年ずつ暮らした経験あり。中高一貫の男子校を経て東京大学へ進学。在学中は古典音楽鑑賞会に所属し、クラシック音楽に親しんできました。
特にピアノ曲を好んで聴きつつも、音楽を仕事にするほどの才能はないと感じ、また読書が好きだったため「広い意味でさまざまな人に楽しみを届けられる仕事がしたい」と、1983年に新卒で集英社に入社。映画専門誌「ロードショー」(2008年に休刊)に配属されました。

「ロードショー」でジャッキー・チェンの担当編集者に

ジャッキー・チェン氏とお祝いの場での2ショット

「ロードショー」では編集者ごとに担当する俳優が振り分けられており、特に思い入れが深いスターは、80年代に香港映画人気を牽引していたジャッキー・チェンです。1984年から99年まで15年間担当を務めました。

当時のジャッキー人気はすさまじく、『プロジェクト・イーグル』(1991)の撮影ではモロッコのサハラ砂漠、『ポリス・ストーリー3』(1992)ではマレーシアのクアラルンプールを訪れ、ロケの模様を独自取材。プロモーションで来日するときには必ず密着取材し、食事から旅行までともにしました。

下積み時代が長かったジャッキーは、気配り上手でサービス精神も旺盛。「撮影の空き時間に自らホウキを持って掃除をする姿に驚いた」そう。社長就任後に会うチャンスがあり、心からお祝いいただきました。

実は昔、ジャッキーの担当者として香港メディアから取材を受けた際、ツーショット写真に「ジャッキーと集英社の社長」と書かれてしまったことが。それから約40年、誤った肩書きに抱いていた罪悪感を、「やっと払拭できた」と笑います。

字幕翻訳家・戸田奈津子さんと公私にわたって交流

敬愛する戸田奈津子さんと

キャリアに欠かせない存在はもうひとり、字幕翻訳家の戸田奈津子氏。連載を担当したことから交流が始まり、名だたるハリウッドスターの通訳を担当してきた戸田氏の膨大な知識量と頭の回転の速さに、刺激を受けました。映画の取材から読者招待旅行のゲストまでさまざまな場面でお世話になり、今も公私にわたってお付き合いが続いています。ワインや食事の嗜好には少なからぬ薫陶を受けているそうです。

一流のプロフェッショナルの仕事ぶりを間近で目にし、世界の良質な映画に触れた「ロードショー」での編集者経験は、入社以来「読者に楽しみをお届けしたい」という原点につながる背骨となっているのだとか。

販売部、経理部を経て、今年、代表取締役社長に就任

1999年には、16年所属した「ロードショー」を離れ、販売部に異動。雑誌を作るだけでは知り得なかった、部数を決めるプロセスや、取次会社の協力が不可欠な流通システムなど、出版業界の仕組みを改めて学んでいきました。

続いて2006年に経理部に異動。そこでも16年にわたって、金融会社や国税庁とやりとりしながら、資産運用や財務などを行ってきました。

2018年に役員待遇になり、役員、常務を経て、2025年8月に社長に就任。2026年8月8日には集英社創業100周年を迎えるというタイミングであり、大事な節目を担うことになりました。

雑誌の発行で創業した会社が、文芸やファッションの分野にも手を広げ、マンガでは多くの才能を発掘、やがてそれらがデジタルや版権、イベント、物販、ブランド事業につながり、海外にまで及んでいく。集英社の現在の業務は、今や出版という枠にとどまらず、多岐にわたります。

「出版社の資本は人。そして集英社の特徴は、社員はもちろん、制作に関わってくださる人たちが楽しそうに仕事をしていること。0から1を生み出す魅力的なIP(知的財産)の創出はもちろん、1を100にして届けていくために必要なのは、働く人たちの環境づくり。これからもモチベーション高く業務に邁進してもらえるよう、尽力していきたと考えています」

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