2023.08.15

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55周年を迎えた「週刊少年ジャンプ」が貫く、ふたつの主義

誰も読んだことのない「おもしろい」を追求

1968年7月11日に創刊した「少年ジャンプ」は、1969年に「週刊少年ジャンプ」として週刊化され、数々の大ヒット漫画を世に送り出してきました。2023年7月10日・18日発売の創刊55周年記念号では、『こちら葛飾区亀有公園前派出所』『NARUTO-ナルト-』という2大レジェンド作品の新作読切を掲載し、大いに盛り上がりを見せました。

©秋本治・アトリエびーだま/集英社 ©岸本斉史 スコット/集英社

両さんと、ナルトの父ミナトがジャンプ本誌に復活登場した
©秋本治・アトリエびーだま/集英社 ©岸本斉史 スコット/集英社

「友情・努力・勝利」というスローガンが広く知られていますが、実は今も大きく掲げているわけではありません。編集部が一番大切にしているのは、何よりも読者に「おもしろい」と思ってもらうこと。『ONE PIECE』や『僕のヒーローアカデミア』のように、「これぞジャンプ!」と言えるような王道のバトル漫画はもちろん、『約束のネバーランド』や『チェンソーマン』のように、誰も読んだことのない新しさも、おもしろさにつながっていく。それぞれの作品に、さまざまな切り口の「おもしろい」があることが重要だと考えています。

ジャンプのふたつの主義

創刊時から掲げている主義はふたつ。そのうちのひとつが“新人育成”です。創刊時、有名な作家はすでに先発の「週刊少年マガジン」「週刊少年サンデー」(共に1959年創刊)などに執筆中。そこで、将来性のある若い作家を発掘し、育成していく現在のスタイルが確立されたのです。当時は苦肉の策でしたが、結果として、若い才能が次々と花開き、時代に合ったビビットな作品が誕生。「ジャンプ」が人気を獲得していくことになったのです。

©週刊少年ジャンプ創刊号/集英社

©週刊少年ジャンプ創刊号/集英社

ただし現在は、個人がSNSで作品を世界に届けられるようになり、持ち込みや漫画賞開催だけで有能な新人が集まってくるわけではありません。コミティア(自主制作漫画誌展示即売会)などのイベントに参加したり、WEB持ち込みのシステムを作ったり、SNSで声をかけたりして、才能とタッチできるポイントを広げる努力をしています。

約1年前からは、新人作家の本誌の原稿料を、大幅に増額しました。デジタル化が進む漫画業界では、機材への初期投資も高騰。若者が苦労する業界に未来はないとの思いから、原稿料アップに踏み切ったのです。漫画家志望者や若手作家をバックアップし、才能ある書き手を増やすためにも、「ジャンプ」で連載する利点をより強く明示していかなければならないと感じています。

編集部が掲げているふたつ目の主義が“アンケート重視”。編集者の考えや好みだけで評価を決めるのではなく、読者アンケートの結果をもっとも重要視しています。名作家でもネームバリューのみで人気が取れるわけではないのが漫画の業界。アンケートで新人作家がベテランを凌駕することもあり、シビアなまでに実力と人気がはかられるのが「ジャンプ」らしさです。

全世界でリアルタイムで楽しめる

漫画の表現方法として、従来どおり雑誌で読んでいただきたいという編集部の思いは変わりません。ただし、デジタル版の普及で、漫画を読むハードルが下がり、新たな読者が流入してきていることも事実です。ライバルともいえる存在になった漫画誌アプリ「少年ジャンプ+(プラス)」の急成長も含め、漫画の未来を考える上でも、デジタルは今後も力を入れていきたい分野です。

ブラウザ版「MANGA Plus by SHUEISHA」のTOPページ

ブラウザ版「MANGA Plus by SHUEISHA」のTOPページ

さらに海外向け漫画雑誌アプリ「MANGA Plus by SHUEISHA」は、中国・韓国・日本以外のほぼすべての国で利用でき、英語・スペイン語・タイ語など8か国語に対応しています。作品の冒頭と最新の数話が無料で読めるサービスで、最大の特色は、連載の最新話が日本と同時に更新されるということ。今後は、日本よりも先に海外で火が付く作品が誕生するかもしれません。

「週刊少年ジャンプ」の漫画のメディア化はこれからも増えていくと思われますが、編集部の目標は、そこを一瞬の花火にすることではありません。作品世界をより多くの人に届け、作家が長く才能を発揮できるよう、体力のある組織づくりに力を注いでいきます。

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