書誌情報
集英社文庫
ものがたり風土記
著者
あらすじ・概要
古代からの伝説、民話、童話、近・現代の小説まで……日本各地に「ものがたり」の舞台を訪ねてパワフルに“現場検証”。歴史に埋もれたそれらの「ものがたり」の成立の謎や、作家の思い、登場人物の実像に思いを馳せる。滋賀、鹿児島、新潟、東京――旅するうちに、思索は海外の文学にも及び、『ギリシャ神話』や『グリム童話』、ミステリーの名作なども登場。知的興奮と発見に満ちた、極上の紀行エッセイ。
第一章 余呉湖のほとり――滋賀1(琵琶湖をめぐる――長浜御坊――狐と狸――昔話と伝説――むべの実――十一面観音を素材に――水上勉〈湖の琴〉――井上靖〈星と祭〉――羽衣伝説――菅原道真の出生異聞――菅山寺へ登る――推理小説のはしり)
第二章 源兵衛の首――滋賀2(水底から幽霊が――語り部の末裔――水上勉〈湖北巡礼〉――武田元明の切腹と美しい妻――国王の死因――中江藤樹の美談あれこれ――小野家の人々――堅田と大津――首なんか二つでも三つでも――ザビエルの腕)
第三章 紫式部はどこにいる――滋賀3(園城寺の鐘――烏賊女房のエロス――水の妖精オンディーヌ――三つの願い――淡い水の大海――芭蕉と義仲寺の句会――むべの実ふたたび――石山寺探訪――三島由紀夫の失敗作――伊藤整の芸術論――文学はよきことか)
第四章 皿を数えて――滋賀4(小説の言語学――湖東の伝説――水辺の灯が消えるとき――レアンドロスとヘローの恋――彦根の皿屋敷――実在する六皿――岡本綺堂のモチーフ――お菊募金はなぜ――蒲生野の恋歌――市辺押磐皇子と科学捜査)
第五章 青の悲しみ――鹿児島1(知覧からの飛行――硫黄島を誤解する――俊寛の島――中村勘九郎の熱演と名言――安徳天皇南行説――だれかが本気でフィクションを――三種の神器を開く――南條範夫〈燈台鬼〉と島の伝説――矢車草の青い花)
第六章 ヒーローたちの走路――鹿児島2(豊臣秀頼も薩摩へ――松本清張のユーモア――アナスタシア伝説――ダンスケとアーサー王――発見〈大石兵六夢物語〉――化物退治の道を行く――坂はゆるやかに消えて――突然たんたど婦人が現われて)
第七章 物語のパターン――鹿児島3(涙橋――里見〓〈ひえもんとり〉――首が落ちた話――死知らず型のストーリー――ビアス〈アウル・クリーク橋の一事件〉――ジメサアを拝めば美人に――桜島と大自然の力――梅崎春生と新田次郎の〈桜島〉――侏儒どん)
第八章 虚実こもごも――新潟1(佐渡島が二つ?――太宰治が見た佐渡――明るい島の悲しい伝説――榎武右衛門の怪――大野亀に咲く浜かんぞう――〈夕鶴〉の故里――裂織の産地だから――安寿恋しや――森?外〈山椒大夫〉は歴史離れ)
第九章 黄金島異聞――新潟2(奇景・道遊の割戸――〈くぼみ頭〉というショートショート――佐渡と鞍馬天狗――のろま人形とマンネリズムの喜び――配流の島――順徳上皇・日蓮・世阿弥の受難――八百比丘尼を捜して)
第十章 人魚の海――新潟3(小川未明〈赤い?燭と人魚〉――アンデルセン〈人魚姫〉――山室静の「ここがちがう」――文月六日はサラダ記念日――親不知の怪談――カルネアデスの板――蛸の骨なし――相馬御風の名をば称えん)
第十一章 翡翠と無用者――新潟4(大国主命とヌナカワ姫――ヌナカワの美しい玉――糸魚川周辺に翡翠の産地が――松本清張〈万葉翡翠〉の研究――あいに荒浜荒砂悪田の渡し――リドル・ストーリー――唐木順三〈無用者の系譜〉――良寛出生の謎)
第十二章 黒く深い森――東京1(〈絶妙な弁護〉をめぐって――ストーリーは進化する――ソロモンと大岡越前守――坪内逍遙〈おしん物語〉――井之頭公園を行く――グリム兄弟が果たしたこと――〈白雪姫〉の中にある女権の確立――帰り水異聞)
引用文献・主な参考文献一覧
阿刀田高 著作・文庫分類目録
