書誌情報
集英社新書
レオナルド・ダ・ヴィンチ ミラノ宮廷のエンターテイナー
著者
あらすじ・概要
ルネサンス期の天才、レオナルド・ダ・ヴィンチ。芸術家、科学者として有名な彼だが、その素顔は人嫌いで、生涯、鏡文字を使い、若いころは未完作品ばかりで、実力はあるけれども「画家失格」の烙印を押されるほどであった。そのレオナルドが、軍事技術者として自らを売り込み、君主の権謀術数の手先として壮大な宮廷イベントの総合演出を取り仕切り、さらに『白貂を抱く貴婦人』『美しき姫君』『最後の晩餐』などの名画を作った約20年間のミラノ時代の活躍を検証する。同時に彼の残した手稿から、天才の秘めた闇の部分も描き出す。(本書より抜粋)「彼は多くの点で異常な人間であると思う。天才的な直観力、豊かな想像力、卓越したアイデア、頭脳の明敏さ、驚くべき集中力など、褒め言葉はいくらでも思い浮かぶ。だが、それと同時に暗い面での彼の異常さも目につく。社会との奇妙な隔離意識と、善悪の彼岸に立ってこの世を眺めているような態度、密かな孤独癖と、愛想のよさに隠された厭人癖などである。本書の狙いは、ある意味でレオナルドという偉大な偶像を破壊することであり、彼を「万能人」とか「時代を超越した天才」としてではなく、われわれと同じ弱点、いや、われわれよりはるかに大きな人間的弱点を持つ人間として捉え直すことであった。
はじめに
第1章 レオナルドが鏡文字を選んだ理由
第2章 はるかなるミラノへ――都落ちの原因は?
第3章 失われた騎馬像についての感想からなにが分かるか?
第4章 ミラノ公国はどんな国だったのか?
第5章 軍事技師と宮廷芸術家として
第6章 天国の祭典
第7章 野蛮人のパレード
第8章 『白貂を抱く貴婦人』はどんな女性だったのか?
第9章 サンセヴェリーノ夫妻の肖像画
第10章 ミラノ宮廷のエンターテイナー
第11章 『最後の晩餐』はなぜ名画なのか?
第12章 ミラノ脱出
おわりに
文献目録および注記
