書誌情報
小説/戯曲
ショコラ歴史から消し去られたある黒人芸人の数奇な生涯
著者
あらすじ・概要
舞台は、まだ人種差別などあたりまえだった19世紀末のヨーロッパ。キューバの黒人奴隷ラファエルは、現地の白人の使用人としてパリにたどり着くが、不思議な縁で、当代きっての人気サーカス、ヌーヴォー・シルクに雇われる。だがそれは、白人道化師の「珍しい生き物」の相方として、人々の笑いの種に絶好という妙案からだった。チョコレートと同じ肌の色から、つけられた芸名は「ショコラ」。
しかし、彼の努力とその才能に気づいた天才舞台監督、才気あふれる相棒道化師フティットの助けもあり、ショコラの人気は急上昇していった。そしてついに主役に抜擢されるや、見事に成功を収め、当時、世界の文化の中心地といわれたパリで、当代切っての道化師とまで評されるようになった。その人気は衰えを見せず、やがてラファエルは、自分は芸だけでなく、「人間」としても評価され、ついに白人と同じ「自由」を得たと思ったのだが……。
著者はフランス社会科学高等研究院の歴史学教授で、ヨーロッパにおける移民問題の権威。わずかに残る事実の痕跡を丹念に拾い集め、私たちのこころに潜む、原罪ともいえる冷酷な「差別意識」をあばきながら、ついに「人間」として扱われることなく、歴史からも消し去られた一黒人の数奇な生涯を描き切った感動の大著!
本国フランスでは、刊行後、アマゾン(フランス)の上位をキープしてベストセラーに。同時に、本書を原案として、注目の人気俳優オマール・シーを主演に映画化される。その大ヒットを受け、日本でも2017年の1月下旬に公開が決定。
原題「CHOCOLAT, La véritable histoire d'un homme sans nom」(2016)
【著者略歴】
ジェラール・ノワリエル( Gérard Noiriel )
1950年生まれ。現在、フランス社会科学高等研究院教授。フランスにおける移民史研究のパイオニア的存在であり、著書『歴史学の<危機>』(木澤社、1997年)と『フランスという坩堝(るつぼ)』(法政大学出版会、2015年)は日本でも高い評価を受ける。2009年頃から道化師ショコラの研究を開始し、研究者と芸術家が協力して文化促進をめざす非営利団体DAJAを立ち上げる。ショコラに関する演劇型講演の企画や、演出家マルセル・ボゾネの舞台『ニグロ道化師ショコラ』の脚本執筆を手がけてきた。
