佳作『遊ぶ幽霊』兎束まいこ

【梗概】

 ある夏のこと。日がな一日読書に耽る、兄・柾木(まさき)と弟・あんじゅ。食べ、眠り、読み、読む本がなくなると買いに出て、戻ってはまた、読む。昼も夜もなく本を読み、今日が終わる。永遠に繰り返される今日という時間――。兄弟は歳をとらず、老人にはなれない。生きている人間の時間からはじき出され、無限の時間を生きる彼らは、どれほど生者の真似をしても、魂がヨミに繋がれているのだという。
 頁の上を這い文字を喰らおうとする紙魚(しみ)を、箸でつまむ兄。部屋の埃が知らぬ間に堆く積もっているのは、交接しているからだと彼は言う。紙魚を食べにくるようになった猫、客が一人もいない動物園、ある朝三歳の躰になっている弟、兄の代わりに帰ってきた狼……とらえきれない眼前の光景と、円環する不思議な時間を、ただ本を読むというどこか官能的な行為だけが繋ぎとめていく……。


【著者プロフィール】

・氏 名
・生年月日
・現住所

兎束まいこ(うづか・まいこ)
1983(昭和58)年
岐阜県