受賞作『黙殺 報じられない無頼系独立候補″たちの戦い』畠山理仁

【梗概】

 今の日本社会では、選挙は公職選挙法により「公正」に行なわれていることになっている。選挙に立候補する者は、誰もが同じ額の供託金を納め、同等の手続きを経て立候補している。しかし、事実上、全くのゼロから立候補した無名の新人が当選することは難しい。当選するのは政党や組織の支援を受けた者や、元官僚や著名人などの「ブランド」を持つ者がほとんどだ。
 この20年近く、選挙取材を続けてきた筆者がそこで見てきたのは、何者にも頼らず独自の戦いを続ける無名の新人候補(=無頼系独立候補)たちが、メディアから無視され続ける現場だった。
 候補者一人一人にはドラマがある。各々が熱い思いで工夫をこらし、独自の選挙を戦っている。彼・彼女らの奮闘を有権者に伝えることがメディアの仕事ではないか。
 しかし、メディアはそれを報じない。ゆえに有権者には届かない。生身の人間が命をかけて繰り広げる泥臭い戦いは、多くの人が目にする前にふるいにかけられ、切り捨てられてきた。今の私たちが見ているのは、「黙殺」の上に成り立つ民主主義かもしれない。
 こうした状況に風穴を開けるため、筆者は取材をすると決めた選挙では全候補者への接触を試みてきた。そして黙殺されるであろう候補者たちの活動を記録し、有権者に届けようとしてきた。

 本稿第一章では、今日本で最も有名な「無頼系独立候補」、スマイル党総裁・マック赤坂への10年に及ぶ密着取材の報告をする。落選し続けても、奇抜な格好と踊りで街頭に立ち続ける思いに迫る。
 第二章では、“平等な”選挙が行なわれない理由を探る。公職選挙法の問題点、大手メディアの姿勢など、民主主義の前に立ちはだかる大きな壁を明らかにする。一方、それに対して筆者が発案したアイデアや取り組みを述べる。
 第三章では、直近で最も話題となった2016年東京都知事選挙における「主要3候補以外の18候補」の戦いをレポートする。

 無名の候補者を尊重できない社会は、無名の有権者である自分たち自身も他者から尊重されない社会であるといえる。選挙取材に明け暮れたこの20年を振り返り、筆者が確信したことは次の一言に尽きる。
「私もあなたもあの人も、社会に無視されていい存在ではない」


【著者プロフィール】

・氏 名
・年 齢
・現住所

・略 歴

畠山 理仁(はたけやま みちよし)
44歳
東京都

1973年、愛知県生まれ。フリーランスライター。早稲田大学第一文学部在学中の1993年より雑誌を中心に取材・執筆活動を開始。関心テーマは政治家と選挙。国内のみならず、アメリカ、ドイツ、イラク、ヨルダン、北朝鮮、台湾なども取材。自著に『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)。取材・構成、編集協力した書籍に『日本インディーズ候補列伝』(大川豊著・扶桑社)、『10分後にうんこが出ます』(中西敦士著・新潮社)、『新しい日米外交を切り拓く』(猿田佐世著・集英社)などがある。東日本大震災以降は、被災地に生きる人々も取材している。