『みずうみのほうへ』(『その静かな、小さな声』を改題) 上村亮平 受賞作

【梗概】

 港のある街で父と暮らしていた僕は、七歳の誕生日に二人で一泊二日のフェリーの旅に出た。父に教わり「サイモン」という人物を想像するゲームをしたその夜、父は船上から姿を消した。
 それから僕は伯父に引き取られ、山間の町で十代を過ごし、大学卒業後はまた港のある街に戻ってきて、水産物加工場で働きはじめた。二十代最後の年、僕はかつて自分が作り上げた「サイモン」にそっくりの人物に遭遇し、埠頭の倉庫街で中古車の売買をしているその彼と知り合いになって、週末は彼のところで車をいじりながら過ごすようになる。
 他にも週に一度、僕は仕事帰りにアイスホッケーを観戦している。山間の町で暮らしていた頃、自分もアイスホッケーをしていたが、そのときいつも練習を見に来ている女の子がいた。そして今、自分と同じようによくアイスアリーナに来て観戦している女性がいて、僕はしばしば女の子のことを思い出すと同時に、その女性に惹かれはじめる。
 ある夜、「サイモン」が、僕と父しか知らないはずのゲームの言葉を口にし、二十年以上前の出来事を語りだした──。

『みずうみのほうへ』

【著者プロフィール】

・氏 名
・生年月日
・出身地

上村亮平(かみむら・りょうへい)
1978年(昭和53年)3月9日
大阪府豊中市