「横道世之介」吉田修一 受賞作

【梗概】

 長崎から上京してきた世之介は、東京の私立大学に入学して大学生活を始める。入学初日に出会った倉持、阿久津唯らと友人になり、なかば強引な形でサンバカーニバル同好会に所属することになる。三人でよく遊んでいくうちに倉持と唯は恋人関係となり、そのまま子供を作って中退、結婚する。二十年後、思春期の娘を持て余す父親となった倉持は、ふとした時に大学時代の友人であった世之介を思い出す。
 二人が同棲しはじめ、あまり大学にこなくなってから、世之介は新たに加藤という友人と仲良くなり、加藤の部屋に転がり込むようになる。その後、加藤は同性愛者であるということを世之介に告白するが、良くも悪くもおおらかな世之介はそれを受けてショックを受けることもなく、逆に加藤は拍子抜けする。二十年後、良きパートナーを得た加藤は大学時代のことを思い出し、世之介という存在を思い出し、世之介という存在と出会えた自分は、出会えなかった他の人生よりも少しだけ幸せなのではないか、と笑う。
 ホテルのベッドメイキングのアルバイトを始めた世之介は絶世の美女・片瀬千春と出会い一目惚れをする。その後何度か会ううちに千春が高級娼婦であるという噂を耳にするが、それでも世之介は諦めきれずに何とか彼女に近づこうとするが…。二十年後、画家のマネージャーとして軌道に乗っている彼女は昔を振り返る暇すらないが、とあるところで聞き覚えのある名前を耳にする。
 世之介は免許を取りに教習所へ通うようになり、そこで浮世離れしたお嬢様の祥子に惚れられてしまう。祥子の強引なペースに巻き込まれ、祥子を田舎に連れて帰り両親にも引きあわせてしまう世之介だったが、同じ時間を長く過ごしていくうちに、あまり気乗りしていなかった世之介も祥子の心優しさや魅力に気づいてゆき、二人はつきあうようになり、そして二十年が経過する。
 世之介と関わった人たちの回想を交えて、ボーっとして、とりたてて取り柄もないけれど、決して人を偏見などでは区別をしない、横道世之介という人物が描き出される。


「初恋温泉」吉田修一


「初恋温泉」吉田修一
 

【著者プロフィール】

・本 名
・生年月日
・略 歴

吉田 修一(よしだ しゅういち)
一九六八年長崎県生まれ
法政大学経営学部卒業。一九九七年「最後の息子」で第八十四回文學界新人賞を受賞。二〇〇二年『パレード』で第十五回山本周五郎賞、「パーク・ライフ」で第百二十七回芥川龍之介賞を受賞し、二〇〇七年『悪人』で第三十四回大佛次郎賞、第六十一回毎日出版文化賞を受賞。ほかに『初恋温泉』『さよなら渓谷』『あの空の下で』『元職員』『キャンセルされた街の案内』など著書多数。