「トロンプルイユの星」米田夕歌里 受賞作

【梗概】

 藤田サトミはちいさなイベント事務所で、山積みの書類や使えない学生アルバイトと日々悪戦苦闘している。そんな中、人材コンサルティング会社の遠野と名乗る人物が、業界大手の事務所への転職を勧めてきた。申し分のない条件に心が揺れ動くが、彼女は今の職場に居心地の良さを感じ、転職に後ろ向きだった。
 ある日、上司の久坂にビルの七階にあるカフェに誘い出された藤田は、ひとで溢れ返る休日の交差点を並んで見下ろした。ずっと仕事人間だと思っていた彼が「この中からあるひとを探し出したい」と冗談めかして言うのをきいて、知らない一面を垣間見たように感じる。
 その直後から、藤田の周囲で異変が起き始める。会社の机の引き出しからお菓子がなくなっていることに気がつき、初めのうちは面白半分に泥棒の正体を暴こうとしていたが、来るはずのアルバイトが来なかったり、大事な資料が机から消えたりと、次第に自分の記憶と周囲の記憶にずれが生じていく。みんなにとってはなかったことになっているものを、あったはずだと主張する藤田。混乱する彼女に対し、久坂は周りのものが次々に消えていくのは自分のせいだと話し出し……。


「トロンプルイユの星」米田夕歌里
 

【著者プロフィール】

・本 名
・生年月日
・現住所
・出身地

米田 夕歌里(よねだ ゆかり)
一九八〇年(昭和五十五年)七月十三日
千葉県市原市
千葉県市原市