「白い花と鳥たちの祈り」河原千恵子 受賞作

【梗概】

 幼い頃、両親が離婚した中学1年生のあさぎは、大好きな母の再婚にともない私立中学入学を機に今の街に越してきた。だが、親しくなったつもりでいた友人に「あさぎって、つまんないんだよね」と言われ、自分に魅力がないことに落ち込む。
 しかも、母の再婚相手・冬木が赴任先から帰国し、一緒に暮らすようになるが、お互いに無口なためコミュニケーションが巧くとれない。また本来クッション役になるはずの母が妊娠し、つわりがひどくて寝込んだりしているため、家庭はぎくしゃくしたままだ。
 一方、あさぎが淡い思いを寄せ、密かに心の拠り所にしている特定郵便局で働く中村は、幼い頃から周囲が普通にできることを巧くこなせず、自分はダメだというコンプレックスを抱えていた。上司が変わり民営化が進み、ますます仕事に行き詰まり、自分なんて消えてしまえばいいと漠然と死を意識する。
 そんなある日、郵便局にひとりの少年が爆発物を持ち込み、中村は大怪我を負い右手の指を2本なくしてしまう。怪我のため休職を続ける中村だったが、それをきっかけに一風変わった女性セラピストに出会い、少しずつ人生に前向きになり始める。
 あさぎも少しずつ冬木に心を開き始めるが、グループの友達に調子を合わせるため冗談交じりに、冬木があさぎに性的な関心を持っているかのような話をしてしまう。それが学校で問題になり、あさぎの母親はショックを受けて急に産気づき、救急車で運ばれる。
 すべては自分の責任だと悩み苦しみ、出張で海外にいる冬木に連絡がとれずにパニックに陥っていたあさぎを指の治療で病院に来ていた中村が助ける。急ぎ海外から駆けつけようとする冬木を二人で待つ間、中村は自分の苦悩を訥々と告白する。中村の苦しみを知り、彼の優しさに接したあさぎは、母に幸福でいてもらうためにも、自分も冬木を受け入れて向かい合い、新しい家族を作り上げていこうと決意する。

白い花と鳥たちの祈り 河原千恵子
 

【著者プロフィール】

・本 名
・生年月日
・現住所
・出身地

金澤千恵子(かなざわ・ちえこ)
一九六二年(昭和三十七年)十月二十五日
東京都世田谷区
東京都文京区