『愛に似たもの』 唯川 恵

【梗概】

 若さと美貌を武器にして、水商売で成功し、すべてを手に入れたと思っていたサチは姉に店の経理を依頼した。ある日、愛人のベッドでみつけたイヤリングは、あれほど外見や地味な生活ぶりを蔑んでいた姉のものだった。(『真珠の雫』)
 離婚したものの、仕事は順調で安定した生活を送る公子。出入りの花屋の青年・稔に心癒されている。欲望はなく、見守り、与えるだけで満足だったのに彼から思いがけない一言が。(『つまずく』)
 理美は高校時代から友人・藍子を参考にし、アドバイスに従ってきた。恋愛も就職も結婚も、全て。だが藍子の夫が亡くなったことをきっかけに二人の関係が逆転して。(『ロールモデル』)
 優等生だった広子は、エリート商社マンと結婚するものの、夫が左遷され現在はパートと姑の介護に追われる日々。この結婚は間違っていたのだと、かつて結婚を迷った昔の男に会いにいくのだが。(『選択』)
 結婚をして人並みに幸せになりたいと思っていた美郷。次々と結婚をしていく友人たちを見るたびに焦りを覚えていた。顔見知りの男から好意を伝えられ、今度こそと、過去の恋愛の失敗を繰り返さないようにふるまうが。(『教訓』)
 編集者の幾子が付き合っているのは、仕事を依頼しているイラストレーター葉月の夫。病気で葉月は亡くなり、ふたりは結婚をして、子どもをもうけた。そして5年後、その子どもが発したひと言は・・・・・・。(『約束』)
 かつて、ある男に、なじみのバーのママとふたまたをかけられていた派遣社員の美樹。まだ傷の癒えない頃、純朴な年下男と知り合い、一緒に暮らすことを決意する。しかしその男はアパート契約金とともに消えて。(『ライムがしみる』)
 危篤の母を見舞うため13年ぶりに帰省した千沙。母のような人生を送りたくなかったから、整形して美を、そして金を手に入れた。でもなぜか幸せとは思えなかった。(『帰郷』)

 幸せを求めるあまり、自分の欲望や嫉妬心に足元をすくわれて、少しずつ不幸に落ちてゆく女たちを描いた8編収録の短編集。

愛に似たもの 唯川 恵
 

【著者プロフィール】

唯川 恵(ゆいかわ・けい)
1955年石川県金沢市生まれ。金沢女子短期大学卒。銀行勤務を経て、1984年、「海色の午後」で第3回コバルト・ノベル大賞を受賞。2002年、「肩ごしの恋人」で第126回直木賞を受賞。リアルな女性の心理を描いた恋愛小説やエッセイは多くの読者の支持を集めている。著書に「不運な女神」「ため息の時間」「100万回の言い訳」「キスよりもせつなく」「燃えつきるまで」「一瞬でいい」「とける、とろける」「瑠璃でもなく、玻璃でもなく」など多数。2008年、「愛に似たもの」で第21回柴田錬三郎賞受賞。