【梗概】

 十四歳の沢村幸彦は、友人と海に出かけた帰り道、突然崖から突き落とされる。一命は取り留めたものの、右足に障害が残ってしまった。周囲が幸彦を突き落とした綾瀬涼平に憤る中、幸彦は彼を庇い続ける。しかし当の綾瀬は、幸彦の前から姿を消してしまったのだった。 一年遅れで中学校に復学した幸彦の前に『科学オタク』中川京一と、左目に眼帯をしたオカルト少女、横山かごめという二人の気になる生徒が現れる。その頃から、幸彦は得体の知れない『やつら』に町の人々がのっとられていく悪夢を見るようになる。それに対応するように、現実では、幸彦を取り巻く人々が奇妙な優しさに浸されていく。旧科学準備室で中川と過ごすにつれて、幸彦は自分の感じている漠然とした退屈が癒されるのを感じる。行き場のない幸彦に付き合い、「もう一度バスケがしたい」という思いを共有してくれた中川。彼の存在で、幸彦は再び生きていく力を見出した。かごめのことが気になる幸彦に、唐突に投げかけられた「世界でいちばんアンタが嫌い」という言葉。その言葉とは裏腹に、ふとした偶然に導かれて、二人は初めて会話を交わす。かごめには、宇宙の彼方からやってくる『やつら』の正体が見えていた。明日になればその影響はピークに達し、地球はひとつになれるのだという。「あんたには、気持ちをわかり合って許し合いたいひとがいる」かごめにそう告げられた幸彦は、消えてしまった綾瀬を探して、痛む足を引きずって歩き始める。 やっと出会えた幸彦と綾瀬だが、二人はもはや被害者と加害者としてしか向き合うことができない。空には、崖から突き落とされたあの日と同じ、でかい満月が輝いている。その夜、二人は分かり合うことができるのだろうか。

 

【著者プロフィール】

1970年、東京生まれ、東京在住