【梗概】

 十五年前の夏。田多間町に住む中学二年生の弥生は、男二人に囲まれて生真面目に猥談を聞くはめになる。語り手は元司書の水口という五十代の男。自宅療養中の彼から、弥生と同級生の一真は奇妙な伝承を聞かされる。それは人間の女を欲しがったナマズについての物語だった。田多間町では、高僧に退治されたナマズの伝説が流布していたが、それは意図的に改変されたものだと水口は言うのである。その元になったという伝承は、エロティックな話に免疫のない弥生と一真にとって、いささか刺激的なものだった。二人は水口の語る話に困惑させられるものの、同時に興味も感じていき・・・・・・
 現在、出産を控えた弥生が胎児に語りかける、かつての淡い思いと一族の記憶。ナマズの秘密がくれた、大切な恋の予感。

 

【著者プロフィール】

1971年東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。現在、無職。