【梗概】

 デパートで働く二十二歳の園(その)と高校三年生の行(ゆき)は、九年前に両親が離婚して以来、離れて暮らしている姉弟。行は父親と、その再婚相手である真奈美、連れ子の忍、愛犬のハルと同じ家に住んでいる。姉弟が子供の頃に拾ったハルは、もう十四歳。散歩に行くことも自分でエサを食べることもできず、行の介護でなんとか生きながらえている。
 一人暮らしをしている園は、仕事や普段の生活、体型維持やファッションについても一切手を抜かない完璧主義者。しかし恋愛に関してだけは、婚約者がいる幼なじみの恭司と、不倫関係を続けていた。
 ある日、行が倒れ、入院してしまう。それをきっかけに、園はハルを引き取り面倒を見始める。ヨボヨボになったハルのただれた皮膚や垂れ流しの排泄物を目の当たりにした園は、デパートにやって来る異質な客「魔女」とハルに自身の姿を重ねていく。
 毎週水曜日にあらわれる「魔女」は、痩せた体にピンク色の服しか身につけず、毎回ピンク色の物を買っていく。園は彼女から、「あなたは私みたいになれる」と言われたことがあったのだ。丁度その頃、時を同じくして、無言電話やいやがらせの手紙が始まり、園を悩ませていく。
 入院した行は受験を控え、志望校に悩む毎日だった。しかし、見舞いにやってくる義兄の忍やクラスメイトのなっちゃんに比べ、周りに合わせてばかりで自分の意志を持たずにいたことに気付き、落ち込んでいく。そんなある日、実母と義母・真奈美の会話を耳にし、両親の離婚や再婚の本当の事情を知ってしまう。また、同部屋の高校教師と語り合っていくうちに、自分について、自分の周りの人々について、改めて考えるようになる。
 一方、続く嫌がらせに落ち込む園は、精神的な拠り所であった恭司にも思うように受け入れてもらえず、隣りに住む小川君の手助けで分かった、犯人の意外な正体とその理由に打ちのめされていた。そして、外泊を許された行が園の部屋を訪れた時、二人の前でハルはあっけなく息を引き取ってしまう。亡骸を埋葬するため、真夜中のドライブが始まった――

 

【著者プロフィール】

本名、入山千砂。1979年北海道生まれ。
愛知淑徳大学文学部国文学科卒業。現在、会社員。