第16回小説すばる新人賞
笑う招き猫・山本幸久
梗概
 『アカコとヒトミ』は二十九歳の女漫才師コンビ。ヒトミは経堂の1Kで一人暮らし、アカコは用賀の大きな一軒家で血の繋がらない祖母と二人で暮らしている。体格、性格、生活環境ともにまるっきり異なるが、大学時代に知り合ってその後コンビを結成して以来いい関係が続いている。
 二人は半年前に桃餐プロダクション・マネージャーの永吉にスカウトされ、事務所付きとなった。先輩芸人の乙光児やその娘のエリとも知り合う。乙の妻はかつてアイドルとして人気を博したユキユメノだった。だが現在家出中だという。ユメノのファンで、幼い頃母を亡くしているアカコは人一倍エリを可愛がる。
 ある日、永吉の命令で二人は先輩芸人のライブにゲスト出演する。テレビに出るようになって芸が鈍った先輩をよそに『アカコとヒトミ』は大いに観客を湧かせた。順調に評価を高めていく二人。そして若手芸人が競う公開テレビ番組のオーディションの話が舞い込んできた。二人ともテレビ出演にあまり興味がなく、できれば生涯、舞台で漫才がしたかった。結婚を夢見なくもなかったが、漫才のほうが楽しいと思っていた。だが仮病でドタキャンした乙の替わりに引っ張りだされ、見事合格し、出演が決まる。
 その数日後、ヒトミはユキユメノを見かける。尾行はばれたが、彼女から驚くべき真実を聞かされた。乙とは半年前に離婚しており、エリの養育権も手放しているというのだ。さらに別の男と暮らしているとも。
 公開番組を勝ち抜くうちに二人の知名度はぐんぐん上がっていく。タレントの道を進むのか、漫才にこだわり続けるのか。そんな微妙な時期を迎えたとき、永吉が会社を辞めることに。彼こそが、ユキユメノの男だった。『アカコとヒトミ』の今後について社長と決裂し、これを機にユメノを連れて実家に帰るのだと言って去ってしまう。見捨てられたような気持ちになるヒトミ。アカコにすべてを話すことはできなかった。かわりに、二人でいつまでも漫才をやっていこうと誓い合うのだった。
著者プロフィール
本名    山本幸久(やまもと・ゆきひさ)
生年月日  1966年(昭和41年)5月31日
現住所   東京都世田谷区
出身地   東京都八王子市
職業    編集プロダクション勤務
最終学歴  中央大学文学部史学科卒業
 

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