集英社 2021年度定期採用情報

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ヤングジャンプ編集部 編集主任
大沢 太郎
2007年入社
ライツ事業部ライツ企画課 副課長
森 亮介
1997年入社

映画『キングダム
クロストーク
~編集×ライツ担当者が語る
メディア化戦略~

「週刊ヤングジャンプ」誌上で圧倒的な人気を誇る春秋戦国大河ロマン『キングダム』は、2019年4月に山﨑賢人さんの主演で実写映画化され、興行収入55億円を超える大ヒットを記録。「メディア化」は、いまやコンテンツを広めるうえで不可欠の要素です。原作を生み出した編集部、メディア化を担ったライツ事業部、それぞれの担当者に映画『キングダム』について語ってもらいました。

『キングダム』原泰久
時は紀元前、春秋戦国時代。500年もの大戦を続ける中国大陸を舞台に、天下の大将軍を目指す下僕の少年・信(しん)と中華統一を志す若き王・嬴政(えいせい)が繰り広げる本格歴史アクションコミック。2012年よりTVアニメの放送もはじまり、2013年には手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。2019年には実写映画化を果たす。
©️原泰久/集英社 ©️2019映画「キングダム」製作委員会

映画『キングダム』の実現に向けて

—— 『キングダム』の映画化はどのような経緯で決まったのでしょうか?

森:『キングダム』の場合は、まず外部の会社さんから映像化を希望するお問合せがあり、それが実現可能かどうかを社内で検討したところからプロジェクトがスタートしました。予算がきちんと集まるか、製作委員会のメンバーはどうするのか、集英社としては何ができるのか……。そこから先方に企画を組み立てていただき、実現に向けてその都度交渉をしていきました。

大沢:編集部はライツ事業部から、映像化オファーがあった旨の連絡を受け、それを原作の原泰久先生に伝えるところから関わりがはじまりました。原先生にとって『キングダム』の実写映画化はOKかNGか、映像化に際して何を希望されているかなどを伺って、ライツ事業部に戻します。企画が進むにつれて予算規模、キャスティング、物語展開などなど、確認が必要なありとあらゆる項目について随時相談していく形でした。

森:原先生にお話しするタイミングについても編集部と相談しながらでしたね。具体的に企画を詰めてからがいいか、それとも早めにご判断いただくべきか、とか。原先生のことを一番理解しているのは編集部ですから。

大沢:多くの作家さんにとってメディア化は特別なものなので、執筆のモチベーションにも関わってきます。『キングダム』の場合も、マンガの打合せをしているのに、いつの間にか映画の話になっていることがよくありました。ですので、映画製作が順調に進むことが毎号の原稿執筆にも繋がると思って臨んでいました。

—— 映画の製作にはどれくらいの準備期間がいるのでしょうか?

森:ケースバイケースですが、『キングダム』で言うと3~4年くらい前に映画化のお話をいただき、そこからプロジェクトを進行していきました。プロジェクト進行はふたつの面があります。まずはビジネスの組み立てで、簡単に言うと製作費などのお金を集めることです。もうひとつは映画の製作そのものです。こちらはまず脚本をつくらなければいけない。脚本がなければキャスティングも撮影場所も決まらず、予算も決まらない。このふたつの仕事を並行して動かしていきます。そして脚本が形になった頃、プロデューサーの方と一緒に原先生にご挨拶に伺いました。それまでも映画化のご相談はしていたのですが、ここで企画自体の最終的な許可をいただき、映画製作が本格的に動き出しました。

—— 原先生はどのような関わり方をされたのですか?

大沢:最も大きく関わったのは脚本のチェックです。原先生は学生時代、映画監督になりたかったくらい映画が好きで、『キングダム』の実写映画化は大きな目標のひとつでした。なので、やるからには必ず大ヒットさせなければならないと。映画の成功にあたっては、原作ファンを納得させるシナリオ構成が必要だということで、稿を重ねるごとに意見をもらって進めていました。

森:そもそも連載作家は執筆でお忙しいので、ライツ事業部がまず考えるのは編集部と同様、なるべく先生にご負担をかけずにメディア化を成功させるということ。とはいえ先生が望まれないものをつくるわけにはいかないので、脚本などご意見を伺いますが、それもできるだけ軽減したい。今回は原先生が脚本会議にまで出席されましたが、本当にレアケースで、ありがたかったですね。

原先生やスタッフの情熱が込められた映画の台本。

大沢:結果的にクランクインぎりぎりまで脚本の直しを行ない、最後は原先生、プロデューサーさん、そして集英社メンバーで12時間も会議をしたんです。その場で原先生にシーンを考えていただき、それをホワイトボードで共有して、最後はセリフのひとつひとつにまで落とし込んでいきました。映画のクライマックスの台本は、大部分が集英社の会議室でつくられています(笑)。ここまで関わっていただいたなら脚本にも先生のお名前を入れなければ……と、我々から脚本クレジットを提案しました。

映像化におけるライツ事業部と編集部

—— メディア化において、ライツ事業部と編集部の役割は何だと思いますか?

森:ライツはメディア化に際して、まず「(製作委員会などメディア側に)原作を大事にしていただく」「原作者のご希望をできるだけ叶える」を指針に動きます。そしてビジネス面も担うので契約条件の交渉ですね。メディア化で発生するお金はできるだけ多く原作者にお支払いすべく、条件を交渉しながら契約します。それは額面だけでなく、著作権などの権利面も含めて。もちろんこちらばかりが良い条件だと、製作委員会に負担が生じてメディア化は成功しない。ひいては原作も盛り上がらない。ときには原作者や編集部に、製作委員会側の要望を理解してもらえるように調整にあたることもあります。

大沢:編集部は直接作家さんと関わる立場なので、もう少し作家さんに寄った調整をしています。いくら条件面が良くても、それが作品にとって本当に良いことなのか、という観点から相談したり。担当編集は作家さんと接する機会が一番多く、何を求めているのか知る立場なので、それをきちんと製作側に伝えるアンプのような役割もありますね。

—— 『キングダム』の映画化で集英社の他の部署との連携はありましたか?

森:出版社にとってメディア化の一番の目的は、原作を盛り上げ、宣伝してコミックスを売ることです。当然コミックス販売部や宣伝部と連携して、「映画化」を原作の宣伝材料として使ってもらいます。そうすると書店さんの売り場に映画情報やポスターが貼られて、映画の宣伝にもなってくれます。さらにファッション誌から文芸誌まで、集英社の雑誌読者を試写に招待する「連合試写会」というイベントがありまして、ライツと宣伝部から各編集長に協力をお願いして、それぞれの雑誌に1ページずつ告知を入れてもらいます。これは集英社の雑誌読者すべてに対する映画の宣伝でもあるんですよね。

大沢:他社でも多くの雑誌にマンガ原作や原先生のインタビューを取り上げてもらいました。なかでも2019年3月には「日経トレンディ」(日経BP社)という雑誌で『キングダム』が特集されて、表紙にもなりました。これらは編集部で直接対応しています。

森:取次会社のトーハンさんとのタイアップ企画もありましたね。トーハンさんのお声がけで、書店さんに『キングダム』コーナーをつくっていただいたり、映画グッズをプレゼントしたりして。メディア化があると、集英社の各部署やおつきあいのある企業の皆さんが、いろいろな形で作品を盛り上げてくださいます。

—— 映画『キングダム』の制作や宣伝で、特に印象に残った仕事はありますか?

大沢:思い出深いものが、ふたつあります。ひとつはJR新宿駅中央通路のビジュアルジャックです。あの大きな通路全体を『キングダム』のポスターで埋めてしまおうという企画で、片側は映画、反対側をマンガの告知に使うことになりました。映画側のポスターは、キャストのビジュアルが華やかで、まさに豪華絢爛!こちらはどう対抗しようかと悩んだ結果、「とにかく熱量で勝負する」ことにしました。コミックス全54巻(当時)から1巻につきひとつずつ印象的なシーンとセリフを選んで、54枚のイラストを並べるという企画です。「こんなにたくさんの名シーン名ゼリフが詰まった作品です!」とアピールしようと。僕と宣伝部の担当とデザイナーさんで事前にそれぞれコマとセリフを抜き出したうえで集まったのですが、各巻ひとつのシーンとセリフに集約するのがとにかく大変で……。三者のこだわりがぶつかり合い、結果1冊につき最低10分は話し合うはめに……。それを54巻分繰り返すというとてつもない打合せを繰り広げました……(笑)。

森:あれは、すごい面白かったね。通行人がみんな立ち止まって読んじゃったりして。

映画キャストが勢ぞろいの豪華ビジュアルが新宿駅をジャック。
原作コミックス各巻から名シーンと名セリフを選り抜いて構成したポスターは、SNSなどで拡散され話題を集めた。

大沢:もうひとつは「週刊ヤングジャンプ」2019年18号に掲載した「原泰久2万字インタビュー」です。原先生が本当にこの映画の成功を願っていたので、どうしてもその想いを原作ファンの皆さんに届けたいと思って企画しました。まずは原先生ご本人に「ヤンジャン」へ登場してもらう交渉からはじめて……(笑)。普段グラビアでお世話になっているチームにカッコいい著者近影を撮ってもらいました。ご本人が誌面に出ることで、「作者の本気」が伝わると思ったんです。「マンガ作品がただ映画になるのではなく、映画監督を目指していたくらい映画好きの原先生の作品が映画となるんだ」と。

森:このインタビューは圧巻ですよね。原先生の熱量がすさまじいというか。

大沢:このインタビューは雑誌派、コミックス派を問わず届けたいと思い、映画と同日発売のコミックス54巻の巻末にも再録しました。「お願いだから原作ファンは全員映画を見てください……!!」という願いを込めて原稿をまとめていました。

森:私の思い出はというと……じつは『キングダム』は集英社が製作委員会の“主幹事”を務めており、プロジェクトリーダー的な存在でもありました。これまでの映画化作品とは役割が段違いに重いうえ、規模も予算も大きく、原先生のご期待も相当強かった。だからリクープ(予算の回収ライン)が見えた時点で、ほっとしたというのが正直なところです。もうひとつの思い出は契約書ですね。主幹事は、製作委員会のメンバー各社さんと結ぶ契約書を作成するのですが、『キングダム』の製作委員会には12社が入っています。つまり12社全部の利害が一致する契約書をつくらないといけない。あちらを立てたらこちらが立たず、その都度個別に交渉を重ねて……。地味ですが手間のかかる仕事で、全社が合意に達したときの達成感はすさまじかったですね。

出版社におけるメディア化の意味

—— 出版社にとってメディア化のメリットは何ですか?

森:「原作の宣伝」に尽きると思います。そしてそれこそ集英社ライツ事業部が目指すところだと思います。

大沢:編集部はそれに加え、作家さんのモチベーション向上と新規読者開拓がありますね。今回の映画のおかげで、普段「ヤンジャン」を読まない層の方に『キングダム』を知ってもらえたことは大きな収穫です。

—— マンガ原作の実写作品が増え、定着した感があります。理由は何だと思いますか?

森:それはやっぱり面白いマンガ作品があるからだと思います。面白いものがあれば、映像にしたいと考える人も増えてくる。もちろんそれは小説でも同じです。ただ、マンガが小説より強い点としては、ビジュアルを思い描きやすいところ。原作自体が絵コンテみたいな部分もありますし。その一方で、ビジュアルがあるからこそ「似ている・似ていない」でファンに評価されるリスクもあります。

—— マンガのメディア化は映画・アニメなどが主流ですが、他に注目されるメディアはありますか?

森:既に定着していますが、2.5次元と言われる舞台ですね。それ以外となると、あくまで今後の盛り上がり次第とは思いますが、ネットの世界での何かだと思います。少し前に話題になっていたVRやVtuberも宣伝ツールとしては面白いと思います。

大沢:あくまで『キングダム』の話ですが、この作品は10~20代のバトルマンガ好きから50代の歴史好きの方まで読んでくださっているようで、世代間のコミュニケーションをつなぐ言語と言っていただくことがあります。最近ではビジネスに役立つとして読まれる方もいて、ベンチャー企業の経営者さんのなかには、社員に課題図書として『キングダム』を読ませている方もいるとか。社員全員が同じマンガを読んでいると、ビジネスの場面で「このプロジェクト、我が社にとって『蕞(さい)の戦い』みたいなものだから」と、局面のニュアンスを素早く共有できるそうです。作品が会社内の共通言語になってしまうという、これもある種のメディア化なのではと感じました。

就活生へ向けて

—— 就活生へ向けて、いまの部署のやりがいをお聞かせください。

大沢:マンガ編集の魅力は「自分の仕事が形となって世に出る」ことですね。以前、沖縄の離島を旅行したときに、集落でたった一軒の商店に立ち寄ったのですが、そこにも自分が表紙を担当した「ヤンジャン」が売られていて不思議な感慨がありました。あと、他業種に就いた友人と話していて感じるのは、自分の裁量がすごく大きいということです。自分の立てた企画や書いた言葉がどんどん世の中に出て、ひとつひとつの仕事に対する自分の影響力がものすごく大きい。意味や達成感を抱きやすいのは、やりがいにつながりますよね。

森:「成果が形になる」はライツも同じですね。作家さんと編集部がゼロからつくったコンテンツをライツは映画やアニメにしますが、作品が世にどんどん広がっていく様を見ることができます。「メディア化を実現させる」ところに醍醐味があるんです。どの原作を、どこと組んで、どういった形で、どれくらい予算を集めれば映像として成立できるか。そしてメディア化の先には様々な宣伝展開がはじまり、作品に盛り上がりが生まれ、原作者の先生が喜んでくださる……。すべてが噛み合ったときには、すごい充足感があります。

—— マンガの編集部、ライツ事業部で働くために必要な能力や、学生の頃にやっておいてよかったことなどがあればお聞かせください。

大沢:なんでしょう、ありふれた言葉ですが、コミュ力でしょうか。僕は旅行が趣味なんですが、宮崎県以外の46都道府県に行ったことがあるので、とりあえず初対面の人とは出身地の話をしています……(笑)。
マジメな方でいうと、「なぜ面白いのか」を言語化にできる能力でしょうか。なぜなら「面白い・面白くない」には必ず何かしらの理由があり、それを噛み砕いて伝えることが作家さんとの打合せだからです。「なぜ面白いのか、なぜつまらないのか」を普段から考えるようにしていると、「つまらない」作品がかえって「面白く」思えてくるから不思議です……(笑)。職業病みたいなものですが。

森:ライツもいろいろな会社さんとおつきあいをするので、コミュニケーション能力は必須です。これは交渉のときほど重要で「どうすれば良くなるのか」「どうして欲しいのか」を、きちんと伝える必要があるからです。ただの「イエス・ノー」では物事は進みません。あとは地道な作業もきちんとできること。映画『キングダム』は華やかなケースですが、ライツの仕事の多くはお問合せの対応や、条件を交渉しての契約書作成です。

大沢:嫌な仕事としては、編集部はネガティブなことを作家さんに伝えなくてはいけないときがありますね。例えば、原稿で直してほしい部分を作家さんにどう伝えるか。単に「ここ面白くないです」というのでは話が前に進みません。作家さんがご自身で「たしかにここは違うかも」と納得してもらえるような伝え方を考えます。誰でもポジティブなことは言いやすいけれど、ネガティブなことは伝えづらい。でも仕事では、否定的なことを告げることの方が多いかも知れません。気が重い会話に向き合う体力は必要だと思います。

森:確かに。「お金をかけていい映像をつくろう」は気持ち良くて言いやすいのですが、ライツでは「製作費を抑えるためにここをカット、ここを縮小」と、ネガティブな主張をする必要もあります。そうしないと予算が回収できなくてプロジェクトが失敗となり、次につながらない。制作現場の熱量に流されず、予算と効果を冷静に客観視できる能力も必要です。

—— それでは最後に、出版業界や集英社を目指す就活生へメッセージをお願いします。

森:先ほどの大沢くんの話と被りますが、集英社は現場に与えてくれる裁量が大きく、自由に仕事ができる会社です。そして自分が関わった仕事がそのまま世に出ていく。それが本当に面白く、仕事のやりがいでもあります。

大沢:本当に自由にやりたい仕事ができる会社ですね。出版や編集に興味がある方は、ぜひ目指してもらいたいです。最後に、僕が就活時代に先輩から言われた一言を。「お前のここから半年間の頑張りで、お前の半生が左右する。だから未来のお前のために、いま死に物狂いで頑張れ」と。

森:すごいプレッシャーかけるね(笑)。

大沢:いや、最初は半信半疑でしたが、結果的にありがたい言葉だったので(笑)。就活が終われば、またのんびりしたキャンパスライフに(戻れる方は)戻れると思うので、頑張ってくださいね。

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