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『地面師たち』に関わる人たち

2024年夏、日本と世界に
戦慄と熱狂を巻き起こした
Netflixドラマ『地面師たち』。

そのはじまりは作家と担当編集、たったふたりの打合せからでした。原作から、読者の手元に届くまで、そして世界中に広がるまで。様々なかたちで企て、絵を描き、実行した、それぞれの仕事を追いました。​

  • プロフィール

    ノンフィクション編集部

    2012年入社、すばる編集部に配属され、「すばる文学賞」を受賞した新庄耕氏のデビュー作『狭小邸宅』を担当する。2013年に小説すばる編集部に異動し、2019年1月号より同誌連載となった『地面師たち』を立ち上げから担当。2021年よりノンフィクション編集部に所属。担当した書籍に『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』(麻布競馬場著)、『学歴狂の詩』(佐川恭一著)など。趣味は麻雀。

    『地面師たち』という作品・現象にどうかかわったか教えてください。

    【2017年9月10日】新宿の居酒屋にて不動産ファンドで働く友人から地面師詐欺事件について詳しく教えてもらう。事件の背景にある不動産開発の構造的な問題と、「本人確認」という営為の根源的な難しさについての解説が非常に面白く、飲み会の途中で新庄耕さんにLINEをする。

    【翌9月11日】渋谷のセルリアンタワーのラウンジで、新庄さんと打合せを行なう。「地面師が主人公のクライムノベルを書いてください」というこちらの依頼を快諾いただく。1時間半ほど話し合い、その場で新庄さんがA4の紙に万年筆で、物語全体の構造とキャラクター配置のラフを書き上げる。「主人公のイメージは誰?」と新庄さんに訊かれ、「綾野剛さんはどうでしょう?」と答える。

    【2018年1月16日】霞が関で不動産業者向けの「地面師対策セミナー」を新庄さんと共に受講。以降、複数の不動産のプロフェッショナルや、実在の大物地面師と対面した経験のある人物などへの取材を重ねる。

    【2018年4月23日】『地面師たち』連載初回の第一稿が届く。冒頭の場面の迫力と推進力に感嘆し、新庄さんの代表作になることを確信する。

    当時のメモや記録を読み返し時系列で書き出しましたが、連載立ち上げ時には社会現象と呼べるほどの大ヒットになるとは想像だにしていませんでした。
    編集者の業務内容は、アイデア出しや入稿作業はもちろん、裁判の傍聴に同行、取材旅行のコーディネート、専門家へのアポ取り、参考文献の収集などなど、多岐にわたります。「作家さんと一緒に面白い作品をつくり上げる」という目的のために、自分ができること・やるべきことをすべて遂行する――というのが仕事の実態です。目的を果たすために手段を選ばない作中の地面師たちと、その点では似ているかもしれませんね。

  • プロフィール

    小説すばる編集部

    2015年入社。すばる編集部、文芸書編集部をへて、2024年より小説すばる編集部に所属。現代の社会的課題と響きあうような物語の編集を心がけている。10代で2度のアメリカ生活を体験したことを機に、翻訳書も愛読するように。文芸の仕事にたずさわり10年がたった現在の趣味は、10周まわって、“読書”。

    『地面師たち』という作品・現象にどうかかわったか教えてください。

    わたしは2024年の部署異動を機に、原作の出版も映像化の撮影もすべて完了した段階で『地面師たち』チームに加わりました。このプロジェクトにおける初仕事はNetflixシリーズ配信開始のプロモーションのひとつ、「小説すばる」に掲載するきらびやかな鼎談収録でした。主演の綾野剛さん、豊川悦司さん、原作者の新庄耕さん、お三方の熱い対話の模様を誌面にする一方、地面師グループの前日譚を描いた『地面師たち アノニマス』の連載を前任者から引き継ぎ、瞬く間に作品が社会現象になっていく様子ににわかに怯えながら、とにかくこの波に食らいつこうと必死にもがいていたことはまだまだ新鮮な記憶です。
    現在は、『地面師たち ファースト・ライト』というシリーズ最新作の連載を担当中。映像化によって尋常じゃなく強固なコンテンツに昇華された物語世界に、いかにして新たな展開やかつてない彩りをくわえられるか……。新庄さんと試行錯誤をつづけています。プレッシャーとよろこびが共存する、得難い編集経験になっていると痛感する日々です。

  • プロフィール

    書籍販売部

    2009年入社、書籍販売部に配属。コミック文庫やj-BOOKS、ダッシュエックス文庫などライトノベルのレーベルを7年程担当したのち、産休・育休をへて同部署に復帰。2022年から文芸書の販売担当に。入社以来同じ部署というと驚かれる年次になってきましたが、不思議と飽きません。いろいろな本と出会えるこの仕事が好きです。

    『地面師たち』という作品・現象にどうかかわったか教えてください。

    『地面師たち』の続編小説『地面師たち ファイナル・ベッツ』の販売担当として初版部数の決定、売上状況のリサーチ、重版の対応を行ないました。発売日はドラマ配信開始の翌日である2024年7月26日。メディア化された書籍の重版検討はとくにスピード勝負のため、毎日書店ごとの売上を細かくチェックします。2刷はすぐに決まりましたが、その後ドラマをすべて視聴された方たちから「地面師ロス」という言葉が聞こえ始め、原作文庫の売上も急伸。書店からの注文も大幅に増えたため、「これはもっといける」と判断し、2刷が書店に並ぶ前にさらに大きな部数で3刷を決めました。
    本が足りないと売り損じが出ますが、見積もりをあやまって重版しすぎれば余剰在庫となります。書店の売上率と自社在庫の数をにらみながら、日々慎重に出荷対応をしました。
    ありがたいことにその後も売れ行きは好調で、年末には宣伝部の尽力で東京駅に大きな広告を掲出することに。近隣書店のご協力もあり、同じデザインのパネルとあわせ、関連書籍を大きく展開していただきました。2024年はハリソン山中をはじめとする地面師グループに素敵な夢を見せてもらった一年でした。

  • プロフィール

    宣伝部

    2023年入社、宣伝部に配属。文芸書やノンフィクション、ライト文芸、児童文庫、写真集を担当しています。学生時代は心理学を専攻しつつ、体育会弓道部に所属。趣味の舞台鑑賞が高じてお笑いサークルにも入っていました。ちなみに中高時代はミュージカル部です。休日は様々な舞台を観劇、長期休暇は海外を旅しています。

    『地面師たち』という作品・現象にどうかかわったか教えてください。

    実写ドラマの開始と同時期に刊行した続編小説『地面師たち ファイナル・ベッツ』をメインに、書籍シリーズの宣伝を担当しました。ドラマをご覧になった方に、原作の書籍シリーズも楽しんでいただくことを使命に、新聞・屋外ボード・SNS・電車の車内などで宣伝広告を順次展開しました。2024年末に東京駅構内に掲出した大型広告では、著者の新庄耕先生と「もうええでしょう」でおなじみ・後藤役を演じたピエール瀧さんのお写真を大きく使用。ミーム化していたドラマの台詞をオマージュした文言で、原作小説の前日譚と続編をPRするとともに、オーディオブックや英語版など、シリーズの多様な展開を紹介しました。デザイナーさんとインパクトのある構図を練り、同ドラマの大ファンの先輩にも相談しながらコピーを推敲する過程では、ハリソン山中に負けじと‟フェティッシュ“にいかせていただきました。工夫次第で作品とより多くの方との出会いを創れることがこの仕事の醍醐味。これからも「大きなヤマを狙いに」いきたいです!

  • プロフィール

    ライツ事業部

    1997年入社。女性マンガ誌「YOU」に配属ののち、「ジャンプSQ.」の前身である月刊少年ジャンプ編集部に異動。全身タイツでジャンプフェスタのステージ司会をこなすなど奮闘した後、2002年に芸能誌Myojo編集部に異動し慣れないタレント取材に奔走。2009年にnon-no編集部に異動後は芸能取材に加え、占いや恋愛相談に料理ページも担当。2013年よりライツ事業部。「もうええでしょう」という暇もないほどの様々な職場を経験している。

    『地面師たち』という作品・現象にどうかかわったか教えてください。

    「企画書は原作者へのラブレター」は、Netflixドラマ『地面師たち』の大根仁監督の言葉ですが、映像化の窓口となるライツ事業部は、いわばその配達人。今作で監督から託されたのは、文字だらけの、しかしご自身の言葉で想いが綴られたストレートな企画書。あえて素直に届けるだけで、新庄先生に想いが伝わり、映像化が動き出しました。配達人としては稀有な例だったかもしれません。ただ、作品ごとに差出人は様々。プロデューサーであったり、脚本家であったり。ちょっとわかりづらい愛情表現の方もいらっしゃいます。大事なラブレターをその相手よりも先に見せてもらうだけに責任重大。「どこが好きなの?」「どんな未来が見えているの?」と掘り下げて、おせっかいと思いながらも、チャームポイントを(時にはウィークポイントも)添えて、原作者にお届けする。毎回クリエイターへのインタビューの気分ですが、そんな技術は芸能誌や女性誌での取材経験が活きているように思います。

  • プロフィール

    文芸編集部

    1995年に入社。ヤングジャンプ編集部に配属。2010年スーパーダッシュ文庫(現・ダッシュエックス文庫)に異動して以来、小説のメディア展開にかかわる。その後、ライツ事業部、集英社文庫編集長、小説すばる編集長を経て、現在は出版マネジメント室室長。高校生の頃から小説、映画にどっぷりはまる。開高健『オーパ!』はバイブル。旅、釣り、食、ゴルフ、ドライブが大好き。剣道五段。

    『地面師たち』という作品・現象にどうかかわったか教えてください。

    『地面師たち』の映像化プロジェクトにはライツ事業部に在籍していた2019年の最初期から、文庫編集長、映像化推進室室長、小説すばる編集長としてハリソン山中的(?)な立場で関わってきました。著者の新庄耕先生、大根仁監督、Netflixのプロデューサー、編集担当やライツ、販売、宣伝の現場スタッフなど、社内外の関係者と連携しながら調整役を担い、プロジェクトを推進してきました。人と人をつなぎ縁を活かすことに注力し、結果的に縁が運を引き寄せてくれました。原作もドラマも大ヒットし、世の中が『地面師たち』に沸くバイブスが地響きのように感じられたのは一生の宝です。新庄先生と挙げた祝杯はえもいわれぬ味わいでした。
    また、このプロジェクトにかかわる新しいチャレンジもできました。海外で日本の小説を翻訳出版する際は、現地の出版社から発売されることがほとんどです。『地面師たち』に関しては世界でドラマが配信されるこの好機を活かすべく、文芸編集部自ら英語翻訳版『Tokyo Swindlers』を手掛け、集英社が版元となるグローバル刊行も実現できました。いまは『地面師たち』の経験を基に、文芸のIP(知的財産)のメディア展開やプロモーション、小説作品の英語翻訳版の100冊刊行を目指したプロジェクト「SHUEISHA100」に取り組んでいます。

関連部署相関図

『地面師たち』原作担当に関わる各部署の役割を示す図。資材部:書籍の印刷用紙の手配や重版対応を担当し、紙に関する相談・手配依頼に対応。制作部:出版物の原価計算・進行・品質管理・重版対応を行い、原価計算依頼・進行・品質管理などを担当。販売部:部数決定・売上データの分析・重版決定、書店との窓口を担当し、部数情報の共有・サイン会の共催などを実施。宣伝部:各種宣伝企画の立案・運用・効果測定を行い、宣伝企画の監修・原作者の窓口・イベントへの登壇などを担当。小説すばる編集部、文芸書編集部、文庫編集部が原作担当として、キャンペーンの監修・原作者との仲介、原作者との仲介、作品のクオリティコントロール、商品の監修、契約書締結など、音声収録の監修、原作者の監修や立ち合いの仲介を実施。デジタル販売部:電子書籍版の制作・宣伝・各電子書店との窓口を担当し、キャンペーンの監修・原作者との仲介を行う。ライツ事業部:メディア化の窓口、プロデュース業務、契約書の作成、締結を担当し、原作者との仲介、作品のクオリティコントロール、商品の監修、契約書締結などを実施。アクセシブル・ブックス推進室:オーディオブックの制作・配信を担当し、音声収録の監修、原作者の監修や立ち合いの仲介を行う。
『地面師たち』原作担当に関わる各部署の役割を示す図。資材部:書籍の印刷用紙の手配や重版対応を担当し、紙に関する相談・手配依頼に対応。制作部:出版物の原価計算・進行・品質管理・重版対応を行い、原価計算依頼・進行・品質管理などを担当。販売部:部数決定・売上データの分析・重版決定、書店との窓口を担当し、部数情報の共有・サイン会の共催などを実施。宣伝部:各種宣伝企画の立案・運用・効果測定を行い、宣伝企画の監修・原作者の窓口・イベントへの登壇などを担当。小説すばる編集部、文芸書編集部、文庫編集部が原作担当として、キャンペーンの監修・原作者との仲介、原作者との仲介、作品のクオリティコントロール、商品の監修、契約書締結など、音声収録の監修、原作者の監修や立ち合いの仲介を実施。デジタル販売部:電子書籍版の制作・宣伝・各電子書店との窓口を担当し、キャンペーンの監修・原作者との仲介を行う。ライツ事業部:メディア化の窓口、プロデュース業務、契約書の作成、締結を担当し、原作者との仲介、作品のクオリティコントロール、商品の監修、契約書締結などを実施。アクセシブル・ブックス推進室:オーディオブックの制作・配信を担当し、音声収録の監修、原作者の監修や立ち合いの仲介を行う。