誰かが〈探書〉に訪れる時、一冊の虚は実になる。

扠、あなた様はどのようなご本をご所望ですか─。

立ち止まって眺めるに、慥かに奇妙な建物である。櫓と云うか何と云うか、為三も云っていたが、最近では見掛けなくなった街燈台に似ている。ただ、燈台よりもっと大きい。本屋はこれに違いあるまい。他にそれらしい建物は見当たらないし、そもそも三階建てなど然う然うあるものではない。しかし到底、本屋には見えない。それ以前に、店舗とは思えない。板戸はきっちりと閉じられており、軒には簾が下がっている。その簾には半紙が一枚貼られている。近寄れば一文字、弔――。と、墨痕鮮やかに記されていた。

書楼弔堂 炎昼
書楼弔堂 炎昼
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書楼弔堂 破暁
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