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  • 【金国の未来を変えるため~兀朮の北帰】
    康王趙構を船で海に逃がした劉光世と、真っ向対決した兀朮。唐昇に戦略を学びながら江南を闘い抜くうちに、兀朮は他の指揮官たちにない戦術の発想を得ていた。誘う劉光世、乗らない兀朮。上手と上手の駆け引きは引き分けに終わり、兀朮らは金国へと帰還することにした。
    二十万の軍が敵陣の中央を帰還する。陣払いをする訛里朶に兀朮は「輜重から先に進軍させろ」と命令。輜重、歩兵、騎馬隊と順を追って隊列を組むことによって、敵が攻撃をしにくい状況を作り上げた。
    作戦は見事功を奏し、金軍には被害なく帰還は成功した。訛里朶の軍一万五千は臨潢府に留まり、兀朮の軍五千騎は会寧府に入る。

  • 【霍閃婆が疾駆の先に見たものは~商隊、金軍と遂に衝突】
    西域より帰還し、沙谷津から武邑まで七日間の道のりを旅する李媛の輜重隊。そこで李媛の弟・李英が合流、輜重隊の護衛についた。 寿陽の北を過ぎたあたりで、耶律大石の本拠地・虎思斡耳朶から戻って来た王定六が合流。軍人以外の仲間とあまり語らった経験がなかった李媛はその出会いを喜び、二人は旅路を進みながら、互いの過去を語った。
    が、その平穏は突然に破られる。鼓城の南十里のところで野営をしていた李媛らは大軍の気配で目を覚ました。真定府付近で調練をしていた訛里朶の軍が眼前に迫っている。荷を置いていけば攻撃はしない、と言う訛里朶に対し、梁山泊軍は守りを固める。
    危機を一刻も本寨に伝える為に出された伝令たちはいずれも途中で金軍の矢に倒れ、残るは王定六ただひとり。が、その背をも無情に金軍の矢が襲う。矢が刺さったまま奔る王定六の目に映るのはすでに景色でなく、死んでいった仲間たちと、戴宗、そして愛した父の顔。
    朦朧とした意識のなか、本寨にたどり着く王定六。「鼓城、南十里」そう幾度か繰り返し、王定六は絶命した。

  • 【張俊の真意はどこに】
    退役を目前にした鮑旭が張家軍に討たれ、危うく攻め落とされそうになった双頭山。梁山泊はその弔い合戦をすべく、張家軍の本拠地である北京大名府を攻めるため軍を編成。ただ、張家軍の兵糧の動きに怪しいものがあるとにらんだ聚義庁は、あえて五日分だけの兵糧を孟康に運ばせ、残りは羅辰の捜索と呼延凌の二千騎を持ってして現地調達せよと命令。理由が分からぬままに呼延凌らは兵糧を探す旅に出た。
    三日目、北京大名府とはだいぶ方向の違う東阿が怪しいと羅辰からの報告が入る。早速二千騎を率いて向かう呼延凌の前に立ちはだかったのは、三千騎の精強な騎馬隊だった。 張俊は北京大名府から本拠地を移す気なのだろうか? 混迷深まる大陸で、各勢力はますます活発に動きだす――。


  • 【沙谷津】(さこくしん)西夏、金国、梁山泊の三か国の国境が接する場所にある、交易の前線基地。河水(黄河)を挟んだ両岸に、梁山泊軍の営舎がある。荷を渡すための船着き場もある。 金国と西夏の二国との間で話し合いが成立し、同じ規模の営舎を建てることが認められた。ただし営舎のみで、防御はない。代わりに水軍の中型船が四十艘ほど停泊している。
  • 【定海】(ていかい)康王趙構を守って江南を逃げ回れ、と、李富が出して来た厄介な命令に従っていた劉光世。その命通りに金軍十万を相手になんとか凌いでいた劉光世だったが、ようやくその困難な任務にも終わりが来た。 阿骨打の息子・兀朮が率いる軍に、負けると見せかけながら江南の東まで深く誘いこむ。もうこの先は海しかない、というところまで撤退すると、そこには宋水軍の船団が康王趙構を迎えに来ていた。劉光世は趙構だけを逃がし、ようやく全力で兀朮の軍と向き合う。
  • 【瑞安】(ずいあん) 定海から逃げた趙構は瑞安に上陸、そこには二万の義勇兵と水軍の船が彼を待ち受けていた。さらに、劉光世軍二万が宋禁軍の旗を掲げて合流。その瞬間を待ちわびていたかのように、江南の地に得体も知れない力がわき上がったのを燕青は感じる。趙構が全土に向けて飛ばした檄にはただ『抗金』とだけ書かれていた。それこそがあまたの策をめぐらせ、李富が入念に準備して来た新国家が立ち上がった瞬間だった。

  • 【梁山泊】 秦容(しんよう)
    霹靂火・秦明の忘れ形見。父の記憶はおぼろげにあるだけだが、父のように梁山泊で働くことをすでに自分に課している。母・公淑と共に子午山へ向かう途中、賊に襲われ瀕死の重傷を負い、その傷跡が顔や身体に残っている。子午山に王進を訪ねて来た童貫に試合を挑んだが、気合いで負けてしまった。いつか戦場で相見えることを心に誓う。
    数年後——かつての傷を負った少年の面影はなく、そこには王進との訓練で鍛えられた一人前の偉丈夫がいた。王進とともに焼いた器を近くの荘で売っていた秦容の前に、公孫勝と喬道清が現れる。彼らが告げたのは,梁山泊の未来を賭けた交易を成功させるために、西夏へ行けという任務だった。
    西夏の主・李乾順の兄である李桂参に命を狙われる韓成を護衛し、交易路の延伸に一役買い、また初めての商隊が西へ向かう際には同行した。
    梁山泊に合流してからは宣賛の意図で、陶宗旺の工兵隊、蘇端の巡邏隊、呂皖の大砲隊を経験し、史進の遊撃隊に配属された。葉敬の部下になるはずだったが、その強さをいち早く悟った葉敬に拒否される。結局自分の意志で郭盛の歩兵隊の一平卒となり、早速岳家軍との戦いで強烈な存在感を示した。
    いつの間にかだめな兵たちの中心にいて、彼らをまとめあげるような不思議な才能がある。李媛の商隊が訛里朶の軍に襲撃された際には率先して「守る闘い」を行い、その手際を李媛に認められ、解任された李英の代わりに一万の軍を率いることとなった。
  • 【梁山泊】 鮑旭(ほうきょく)
    喪門神の名を持つ鮑旭は、かつて人殺しも辞さない追いはぎだった。魯智深を襲って返り討ちにあい、梁山泊を経て子午山に預けられ、更生する。新生梁山泊では新兵の調練に余念がない。が、五十を過ぎて病を得、宣賛に退役を願い出た。
    退役まで一ヶ月を残し、鮑旭は思い出の地、双頭山に配備される。そこで岑諒とともに調練と守備の毎日を過ごしていたが、張家軍の攻撃を受け、予期せぬ戦闘を開始した。自らを平凡な軍人、と称する鮑旭は愚直なまでの堅い守りを見せたが、兵の消耗は激しく、攻め込まれてしまう。砦に退避する直前、負傷した岑諒を崖の下に見つけ、彼を助ける為に自ら敵三千の前に躍り出た。 戟と剣を遣い敵を足止めするその姿は、もはや梁山泊の伝説となった美髯公・朱仝のようだった。死域に入り、矢だるまになってもまだ敵を討とうとし、そのまま死んだ鮑旭のその姿に、張俊は「自分がここにいる事を知らしめるため」に戦を仕掛けた、自分の心をわずかに恥じた。
  • 【梁山泊】 王定六(おうていろく)
    戴宗にその足の速さを見抜かれ、梁山泊に入山。宋江が生きていた時代からずっと、長駆隊の指揮を担当している。
    頭領が楊令になってもその役割は変わらず、引き続き戴宗のもとで通信網を充実させるべく、西域と梁山泊の間を駆け巡る日々だった。ある日、沙谷津から武邑へ荷を運ぶ李媛・李英の部隊と合流し、梁山泊へ戻る最中に金国の訛里朶の軍と衝突。彼らの危機を本隊に伝えるために金軍の間を縫うようにして駆けたが、途中矢で負傷。楊令に李媛の部隊の場所を告げ、そのまま絶命した。
  • 【梁山泊】 杜興(とこう)
    元々は独竜岡李家荘の当主であった李応の執事。毒舌だが兵の心情を汲み取るのが上手く、戦いで心に傷を負った兵たちを立ち直らせるのが得意。
    新生梁山泊では李応の娘・李媛の重装備部隊の副官を務め、その後聚義庁の呉用や宣賛の相談役として、また軍監として兵を見回るなどして皆を助けた。耶律大石に会って話をするため、五郎を連れて砂漠を越える長い旅を経験。梁山泊に貴重な情報をもたらす。またその岐路で岳飛の一行と会い,一晩たき火を囲んで語り合った。
    裁判の判決の確認や、巡邏隊の仕事ぶりの確認、そして時には国外との大きな折衝など、地味だが大切な仕事に数多く関わって来た杜興。彼の最期の仕事は、父の遺志に捕われて北京大名府を攻めたいと言い張り、梁山泊内に不穏な空気を生み出している李媛をなだめることだった。「命をかけて言っているのか、腑抜けの老人」と李媛に罵られた杜興は、いよいよ最後の手段をとる。それは、李媛にだけ告げた方法で、事故に見せかけて自裁し、李媛を深く傷つけるというものだった。
    南宋、岳家軍、張家軍、金国。戦乱の世に梁山泊が生き残ってゆくなかで、李媛が声高に主張したことは、今後の梁山泊の存続を揺るがしかねない得手勝手な意見ではあった。だが、宋を完膚なきまでに討ち果たし領土を広げたいという、あくまで当初の「替天行道」にこだわる者たちの意見でもあったのではないだろうか。その流れこそを危惧した杜興は、李媛に伝えたままの方法で自裁し、その死を最期まで梁山泊のために役立てようとした。
  • 【岳家軍】 軻輔(かほ)
    隆徳府の兵糧庫を焼いた賊徒。かつては耶律被機の軍にいた。実直な役人だった父が、熟女真を匿ったという理由だけで楊令に殺されたことを深く恨んでおり、たとえ死んでも魂で楊令を殺してみせると決めている。岳飛の思い「盡忠報国」に心を動かされ、岳飛が報を尽くす「天」の意味が分かるまで岳飛軍で生き延びることを望んだ。金軍にはかつての同僚がいることもあり、金国朝廷の情報に詳しい。
    過去に部下である謀屯が自分をかばって死んだことこともあり、自分は岳飛の為に死ねるのか、戦で死ぬ事とはなんなのか、そんな思いに捕われながら闘っている。
  • 【金軍】 兀朮(ウジュ)
    阿骨打の息子にして、訛里朶の兄。斡本の弟。軍を率いて南下の準備を進めている。他の指揮官たちと違い、唐昇や完顔成、蕭珪材の言葉に価値を認め、経験からなる彼らの戦略を学ぼうとしている。その結果、他の指揮官たちが苦しんだ劉光世に対して、定海では互角の闘いぶりを見せた。
  • 【金軍】 訛里朶(オリド)
    阿骨打の息子にして、兀朮の弟。金軍が中原に勢力を伸ばし始めてからは、真定府付近で軍の調練をやっていた。が、鼓城の南を通過しようとした李媛の商隊を襲撃、三万の軍で対峙したが最後には楊令軍に打ち破られた。
    捕縛されながらも訛里朶は「志を忘れ、金勘定ばかりしている女のような守銭奴」と楊令のことを罵る。後に兀朮が楊令と和議を行い解放されたが、楊令を過剰に恐れる呉乞買によって遠い北方の地へ流された。
  • 【斉】 劉彦宗(りゅうげんそう)
    燕雲十六州にある貧しい漢人の家に生まれる。五歳で私塾をやっている老人の養子となり、二十九でその塾を継いで以来、二十年ほどずっと、燕京で私塾を開いている。もともと旧遼にも金国にも属さない精神の持ち主で、燕雲十六州が宋に帰したときも靡かなかったが、李富に銀と女で飼いならされたあげく、拷問の恐怖を植えつけられ、青蓮寺を裏切れない身体になってしまう。多くの弟子を世に送り出しており、各国につてがある。韓伯竜は彼のもとで住み込みの弟子をしていた。
    従兄弟・劉豫が金国の傀儡として「斉」の国の帝となった時、宰相の位に就いた。が、あっけなく暗殺されている。
  • 【斉】 劉豫(りゅうよ)
    山東に住む、劉彦宗のいとこ。もともと宋の役人で、宋が崩壊した後も山東をうまくまとめていた。民政の手腕はあるようだ。私兵など持たないただの役人だが、金軍の兵をうまく利用して立場を保っている。劉彦宗の仲立ちで撻懶と会い、中原の国「斉」の傀儡の王になることを了承した。

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