受賞作『五色の虹〜満州建国大学卒業生たちの戦後〜』三浦英之

【梗概】

 日中戦争の最中、日本の傀儡国家となった満州で、日本、中国、朝鮮、モンゴル、ロシアの五民族から選抜された優秀な若者たちが六年間、共同生活を送った場所がある。
 幻の大学と呼ばれる最高学府「満州建国大学」。
 そこでは満州国の国是「五族協和」を実践すべく、特殊な教育が施されていた。学生たちは二十数人単位の寮に振り分けられ、授業はもちろん、食事も、睡眠も、運動も、生活のすべてを異民族と共同で実施するよう強制されていたのだ。一方、学生たちには「言論の自由」が等しく与えられ、五民族の学生たちはそれぞれの立場から、日本や満州の政策をめぐって日夜激しい議論を戦わせていた。
 一九四五年、満州国が崩壊すると、建国大学は開学わずか八年足らずで歴史の闇へと姿を消す。それぞれの母国へと戻った学生たちは「日本帝国主義への協力者」として弾圧され、過酷な生活を余儀なくされた。日本人学生の多くはシベリアに送られ、中国やロシア、モンゴルの学生たちは長年、それぞれの権力の監視下に置かれた。
 そんな彼らが半世紀以上、密かに編み続けてきた記録がある。極秘の同窓会名簿である。卒業生一五〇〇人の氏名と住所、戦後に就いた職業などが記されている。
 筆者は二〇一〇年に開かれた「最後の同窓会」をきっかけに、元学生たちの証言を集めるべく、日本、中国、韓国、モンゴル、台湾、カザフスタンを訪ね歩く「旅」に出た。
 幻の大学と呼ばれる場所で、彼らが夢見たものとは何だったのか。その後、どのような戦後を生き抜いたのか。そして今、日本をどのような眼差しで見つめているのか。
 初めて明らかになる「スーパーエリート」たちの実態とその戦後を綴ったドキュメント。


【著者プロフィール】

・氏 名
・年 齢
・現住所

・略 歴

三浦英之 (みうら ひでゆき)
41歳
南アフリカ共和国(ヨハネスブルグ)

1974年神奈川県生まれ。京都大学大学院卒。朝日新聞記者。東京社会部、南三陸駐在などを経て、現在アフリカ特派員(ヨハネスブルク支局長)。
著書に『水が消えた大河で JR東日本・信濃川大量不正取水事件』(現代書館)、『南三陸日記』(朝日新聞出版)。