【梗概】

 熱気球による冒険によって、数々の世界記録を打ち立ててきた、神田道夫。彼は埼玉県比企郡川島町の町役場に勤める地方公務員でありながら、オーストラリアで熱気球中量級の長距離飛行世界記録、カナダでは滞空時間世界記録を打ち立て、エベレスト越えやK2越えといった冒険飛行に挑戦し、2000年には西ヒマラヤ最高峰ナンガパルバット越えに成功した。それらの偉業によって、気球界で最も権威あるモンゴルフィエ・ディプロマ賞を日本人として初めて受賞し、日本では2000年に植村直己冒険賞を受賞している。神田は空の世界では唯一無二といえる冒険家であり、不屈の精神の持ち主だった。
 その神田道夫が、2008年2月、熱気球による単独太平洋横断に挑戦し太平洋上で行方を絶った。このニュースは新聞やテレビなどで大きく取り上げられたが、神田の行方も未だわからず、飛行の詳細も明らかになっていない。
 筆者の石川直樹はその4年前、2004年におこなわれた最初の太平洋横断に副操縦士として同乗し、今回と同じように太平洋上に着水して、神田と共に生死の境をさまよった経験をもっている。
 地理的な冒険や探検といった行為が困難になりつつある時代に、神田道夫は誰よりも冒険家としての気質を発揮し続けていた。その原動力になっているものはいったい何か。何が彼をして未知なる冒険に駆り立てるのか。これは、2度にわたって行われた熱気球太平洋横断遠征の顛末を追いながら、彼との出会いと別れを通して神田道夫の飛行の軌跡を描く体験的なルポルタージュであり、冒険の時代が終わった現代における冒険論である。

最期の冒険家 石川直樹

最期の冒険家 石川直樹
 

【著者プロフィール】

・本 名
・年 齢

・略 歴

石川直樹(いしかわ・なおき)
31歳

 1977年6月東京都渋谷区生まれ。高校時代にインドを一人で旅して以来、世界中を旅するようになる。2001年世界七大陸最高峰登頂の最年少記録を塗りかえる。写真集『POLAR』(リトルモア)、『NEW DIMENSION』(赤々舎)により日本写真協会新人賞、講談社出版文化賞を受賞。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。