【梗概】

 東京から約千キロ離れた南の孤島『青國島』。人口はわずか九四〇人。四十平方キロメートルの東西に細長い島に空港はなく、交通手段は月に二便の貨物船に限られている。戦後、アメリカ統治下におかれ、小笠原諸島返還から十年が過ぎた二十五年前に返還された。島内は主要三地区に別れており、漁師を中心とした古くからの住人が占める南地区、観光地の港地区、島外からの移住者が多い中地区がある。

 主人公は元警視庁捜査一課高州康彦。職務中の交通事故がもとで退職していたが、臨時で半年間青國村保安官の任につくことになる。前任の保安官である柴田は三週間前に脳梗塞で死亡したという。高州は元上司でもあった妻とは離婚、都会の喧噪から遠く離れた場所で〈保安官〉として平穏に暮らすことを望みこの地に赴いたはずだった。

しかし、着任早々平和な島に次々と事件が起こる。南地区に住む草引老人の溺死に始まり、亀浜ビーチに立ててある看板が何者かによって放火、レンタルビデオショップの経営者野口が銃で殺害される。そうした中で、柴田が島の財産を狙ってあれこれ嗅ぎ回っていたという噂を耳にする。高州は真相を求め、孤独な追跡行に身を投じていく。
事件はその後も収まる気配がなく、島でただ一人の医師オットーが殺害され、収入役の草引と中地区の風俗譲ユキが殺害される。これらの事件が重なりあい、島の人々が隠し守ろうとする〈秘密〉が少しずつ浮かび上がっていく。一寸先も見えない霧の奥に見え隠れするある意外な理由と事件を計画した人物とは……。

 巨大な密室で繰り広げられるハードボイルド巨編。

 

【著者プロフィール】

1956年愛知県生まれ。
慶応義塾大学法学部中退。
79年「感傷の街角」で第1回小説推理新人賞受賞。
85年「深夜曲馬団」で第4回日本冒険小説協会最優秀短篇賞受賞。
91年「新宿鮫」で第44回日本推理作家協会賞長篇部門、第12回吉川英治文学新人賞受賞。
94年「新宿鮫 無間人形」で第110回直木賞受賞。
2001年「心では重すぎる」、02年「闇先案内人」で第19回、第20回日本冒険小説協会大賞を2年連続受賞。