【梗概】

 突然訪れた「となり町」との戦争のお知らせ……。町役場からの広報紙により、北原修路は、自分が住む舞坂町と、となり町との戦争開始、そして戦死者の存在を知らされる。やがて、町役場の要請により「敵地偵察」の任を負うことになった北原は、「役場の論理」で「戦争という事業」が着々と不条理に進められていく現状を感じながら、戦争自体がどのような形で行われているのか実感を持つことができない。

 やがて、戦死者が増加していく中、となり町に潜入する「拠点偵察」の任務を与えられた北原は任務の一つとして、役場につとめる香西さんと結婚生活を営むことになる。実際に戦争業務を遂行する彼女との対話の中から、戦争の実体を嗅ぎとろうとするが、業務としての戦争しか語らない香西さんとの間に戦争観の違いを痛感しただけだった。

 かつて人を殺した経験があるだろう「主任」と会話をし、戦争に関する「地元説明会」に参加するうちに、戦争に対する意識が変わりつつある北原に決定的な転機が訪れる。となり町の「査察」により、初めて敵の存在を意識することになったのだ。命の危険を感じながらの逃走を経験することで、初めて北原は戦争の音や光、響きの欠片らしきものを感じ取ることに成功する。

 始まりと同じく戦争は、終わりが訪れるのも突然だった。香西さんからの一本の電話によって戦争終結を告げられた北原は、彼女との擬似結婚生活にも終止符をうつ。そして、いつのまにか日常の延長として起こった戦争が終わり、日常へ復帰していく中、北原はある感情を抱くようになる。それは香西さんまでいつのまにか失うことにはしたくない、という強い思いだった。

 

【著者プロフィール】

・本 名   非公開
・生年月日  1970年(昭和45年)8月27日
・現住所   福岡県久留米市
・出身地   福岡県久留米市
・職 業   公務員
・最終学歴  熊本大学文学部史学科卒業