ライブの帰り、我南人はチンピラに絡まれている女の子を見つける。彼女の名は秋実。歌手として活躍する親友を窮地から救うため、東京に来たという。我南人と〈東亰バンドワゴン〉の一同は、彼女のために一肌脱ぐが、思わぬ大騒動に発展し……?

『東京バンドワゴン』シリーズも今回で十二作目になりました。十周年という記念すべき年を越えてさらにシリーズを続けることができるのも、〈堀田家〉に大いなるLOVEを与えてくださっている読者の皆さん、応援してくれている日本中の書店さんのお陰です。本当にありがとうございます。
 さて、十二年経って干支が一巡りした今回の新刊のタイトルは『ラブ・ミー・テンダー 東京バンドワゴン』です。
 いつも通りに、前作のすぐ何日か後からの堀田家の四季の出来事を追う〈本編〉ではなく、オリンピックの様に四年に一度回ってくる〈番外編〉です。
 今まで、終戦直後の若き勘一とサチの出逢いを描いた『マイ・ブルー・ヘブン 東京バンドワゴン』、いろんな時代の堀田家と常連の皆の語りでそれぞれの日々を描いた『フロム・ミー・トゥ・ユー 東京バンドワゴン』と、〈番外編〉を書いてきました。
 今回は、時代は昭和四十年代です。
 まだ二十代の若者だった〈堀田我南人〉と、その最愛の妻であった〈堀田秋実〉の出逢いを描いた物語になります(秋実さんはまだ高校生です!)。
 読者の方はご存知のように、秋実さんは「堀田家の太陽だった」と、皆から愛された人でしたが、そのエピソードは故人ゆえにほとんど語られていません。唯一、『フロム・ミー・トゥ・ユー 東京バンドワゴン』で我南人と出逢ったその場面が、経過した時間を推察するとほんの十数分間の出来事を、秋実さんの語り口で描きました。
『ラブ・ミー・テンダー 東京バンドワゴン』は、まさしくその場面から、物語が進み始めます。
 本編のタイトルはいつも〈ビートルズ〉の曲名ですが、番外編に関してはその縛りを解いています。今回、エルヴィス・プレスリーの名曲である〈ラブ・ミー・テンダー〉にしたのは(もちろん、物語を読んでいただき歌詞と合わせて考えていただければ理由はわかるのですが)、ロックミュージシャンである我南人のルーツはビートルズだけではなく、それ以前のロックンロールミュージックにもあるからです。 『マイ・ブルー・ヘブン 東京バンドワゴン』で描いた勘一とサチが親しみ演奏したジャズやブルースから来た音楽の流れがロックになりポップスになり、我南人に、そして孫である研人へと受け継がれている。作者である僕が憧れ続け、それなしでは生きられない〈音楽〉への愛情を物語の芯に据えました。そして、実はこの〈東京バンドワゴンシリーズ〉の根本である〈テレビドラマ〉をいつも以上に意識して、引いては音楽・テレビ業界への思いもしっかりと込めさせてもらいました。
 もちろん、いつも通りに〈堀田家〉とそこに集う人たちの日々も描いています。時代は昭和四十年代です。このシリーズの都合上、昭和何年という特定はしていないのですが(笑)、東京オリンピックも終ってビートルズが来日して〈グループサウンズ〉が流行り始めた頃、と、イメージしてくださるといいと思います。
 この物語が、皆さんの日々の暮らしにほんのちょっとでも楽しさや明るさを添えられればそれだけで幸せです。よし明日も頑張ろう! と思ってくださればさらに嬉しいです。
 どうぞ今回も〈堀田家〉をよろしくお願いします。