七人の敵がいる 加納朋子

著者インタビュー

加納朋子 『七人の敵がいる』

出版社勤務の陽子は、息子が小学校に入学して初めてのPTA役員決め保護者会で空気を読めず、早速「敵」を作ってしまい……。
加納朋子さんの新刊『七人の敵がいる』は、子育てする母親なら誰もが直面するPTAの問題を、ワーキングマザーを主人公に、笑いあり、涙ありで痛快に描いた作品です。前代未聞のPTA小説発売にあたって、著者の加納さんにお話をうかがいました。

加納 朋子
かのう ともこ●作家

1966年、福岡県北九州市生まれ。
文教大学女子短期大学部卒業後、化学メーカーに勤務。
平成4年、「ななつのこ」で第3回鮎川哲也賞受賞。
平成6年発表の短編「ガラスの麒麟」で、第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)受賞。
現在は専業作家であり、一児の母である。

専業主婦・兼業主婦 両方の気持ちがわかる!

——加納さんは作家であると同時に一児の母でもいらっしゃるわけですが、『七人の敵がいる』はそんなご自身の経験から生まれた小説なのでしょうか。

そうですね。私は子どもが小学生になったら、劇的に楽になると思っていたんです。保育園時代は持ち物の洗濯が大量にあったり、行きたくないと泣かれたり、いろいろあったので。小学生になれば送り迎えをしなくていいし、給食も出るし、放課後は学童保育があるし、いいことずくめだと。ところがどっこい、大変なことが山ほどあった(笑)。それがPTAであり、学童保育の役員であり、自治会や子供会の役員であり……。とにかく、保育園のほうが楽だったかもと思うくらい、ボランティアの仕事がたくさんふりかかってくることがわかったんです。それはもう、母親が職業を持っていようが持っていまいが関係なしに。そんな経験を通して、驚いたり考えさせられたりすることがあまりにも多かったので、これは書くしかない! と思いました。

——本作では、ワーキングマザーの陽子が小学校に上がった息子の初めての保護者会で空気を読めない発言をして、専業主婦を敵に回します。加納さんも、専業主婦と兼業主婦の溝に早くから気づかれていたのでしょうか。

実は私、初めての保護者会の日に仕事があったので、代わりに主人に行ってもらったんです。その際、PTAの役員決めが難航したそうなんですが、どうやら主人が「専業主婦の方にやってもらえれば」みたいなことを言ったらしくて。「これはまずい」と思って、それ以来、保護者会は全部私が出るようになりました(笑)。男性が言う分には、あまり反感を持たれなかったみたいですけど。

私は家で仕事をしているので、専業主婦の気持ちも兼業主婦の気持ちもわかるんです。家で仕事をしていても役員を引き受けると大変なのだから、会社員のお母さんはもっと大変だということも想像できる。だからこそこの小説では対立図式を書くのではなく、どんな立場の人でも小学生の親になると難関が待ち構えているという現実を書きたいと思いました。幸いネタには困らないというか、母親同士で話していると愚痴やら何やら出てくるので、それを何年間も聞いていろいろな形に変えて、エピソードにしました。

——有能な編集者でサバサバした性格の主人公・陽子が、PTAの仕事の多さやその意味に疑問を持った気持ちはわかります。

陽子が指摘したようなこまごまとした仕事も大変ですが、PTA執行部の役員になると信じられないくらいの大変さですよ。三日と空けずに学校に行かなければならない、年度末などは毎日行かなければならない。任期が終わったときは心底ほっとしたと、経験者から聞きました。一部の人にそこまでの重圧を加す必要があるのかなと、つくづく思います。そんな仕事は働いている母親には無理だし、父親にはなおのこと無理。なので、専業主婦の方がやらざるを得なくなってしまう。彼女たちが不公平に思うのは、当然ですよね。

——働いているお母さんたちは、そういった現状をどの程度ご存じなのでしょうか。

あまり自覚がないかもしれないですね。PTAに限らず、専業主婦と兼業主婦の間に溝が生まれる原因はいろいろあると思います。例えば、兼業主婦のお子さんが専業主婦のお宅に行って、お子さん同士遊ぶことはよくあるわけですよ。いつも一方的に遊びに来られて好き放題騒がれると、専業主婦は「母親が働いている家庭の子は躾が行き届かない」と思ってしまう。それは偏見なんですけど、実際そういうことが積み重なると、だんだん溝ができていくんです。だからPTAの役員を決めるときに彼女たちは、「普段から迷惑を被っているのは専業主婦なのに、また負担が増えるの!?」と思ってしまう。

——一方で、兼業主婦の言い分もあると思いますが。

働いているお母さんはとにかく忙しいので、PTAの仕事にしろ何にしろ、抱えるものを最小限にしたいというのが正直な気持ちだと思います。作中でも触れましたが、母親が働いていると実際子どもにしわ寄せはきちゃうわけですよ。それは親もわかっているだけに、つらい。一番きついのは育児を他人に丸投げしていると言われることで、そこを専業主婦の方や義理の母から責められると本当に泣きたくなると思います。仕事も育児もできる限り一生懸命やっているのに、と。

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ママ友も、義母も、男も、夫も、子供も、先生も、PTA会長も、女の周りは敵だらけ!?

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